ふたーば

ジャッカルのふたーばのネタバレレビュー・内容・結末

ジャッカル(1997年製作の映画)
3.1

このレビューはネタバレを含みます

おもろいけどなんか古めの007と90年代のハリウッドアクションっぽさを足して最後はずっこけるみたいな、そういう映画だった。

ダイ・ハードシリーズではテロリスト絶対許さないマンだったブルース・ウィリスが今度は冷酷無比な殺し屋として登場。前半のジャッカルさんは良い仕事をする取引相手にはチップを上乗せしちゃうくらい気前の良いの人なのに、笑顔の裏には「多分邪魔になった人間はためらいなく殺すんだろうな……」と感じさせる部分があり、「血が通っている」「でも徹底した合理主義者」という、イメージ通りの殺し屋って感じでなかなか怖い。この辺はすごくよかった。

けどなんか途中からキャラ崩壊というか、「あれ、そんなことして大丈夫……?」みたいな描写が結構目立つ。「出自も国籍さえも不明。そもそも実在しているかどうかも分からない」みたいな設定だったのに、わざわざ証拠が残りやすそうな特注の武器を使って取引相手を派手に殺してしまったり、そのせいでバリバリに顔写真付きで「凶悪殺人犯出没中!」ってテレビ放映されてしまったり(この時点でジャッカルさんはこの後、引退か死かの二択になってしまうわけで……)、ライバル?の主人公にはヒントをあえて与えたり煽ったり勝ち誇ったりして、そのせいで窮地に陥ってしまったり……全体として後半は、「あんだけすごい額要求したくせに、プロとしてどうなん?」みたいなことばかりしている。

ジャッカルは怖いやつなんだよ~サイコ野郎だよ~という強調をしたかったのだろうけど、後半はなんか怖さ・強さよりも「ハリウッドの悪役」のクリシェにキャラが傾きすぎててちょっと興ざめだった。キルカウントが上がれば上がるほど、反比例して「ジャッカル」という神出鬼没・正体不明の殺し屋という存在感に説得力がなくなっていく。だから全然暴力的でないけど、仕事の完成のためには高額な注文も即断してしまう(支払いを契約時と完成時に毎度分けてるのも、地味なリアリティがある)ところ、武器の仕様や設計については細部まで徹底して理解するだけの知識があるところ、それから下準備のためには釣り好きなアメリカ人にも、腹の出たトラックの運転手にも、高級ゲイクラブに出入りする色男にも扮装するところ等、丁寧にコツコツ準備しているときのジャッカルのほうが不気味で良かったな……

MASSIVE ATTACKがサウンドトラックに参加、しかも使ってる曲が大好きな『MEZZANINE』からという点がすごく楽しみにしていて、実際に場面の転換のときにいかにもマッシヴらしいドラムパターンが頻繁に登場して「おお……」と感動していた。そこは◎。あとメインテーマの"Superpredators"はやっぱりめちゃくちゃかっこいい。

でも導入の妙な007っぽさ、善玉サイドのリチャード・ギアの絶妙に説得力のないキャラ設定、あと無駄な恋愛描写がなんか、全体として作品のクオリティをチャチに感じがした。まぁそういう、90年代の笑っちゃうような映画描写を楽しめるという点では最高なんだけど……シドニー・ポワチエがそういうダサい要素をうまく底上げしてくれている感じがしてそこは好きだったな。
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