晴れない空の降らない雨

宇宙の法―エローヒム編―の晴れない空の降らない雨のレビュー・感想・評価

宇宙の法―エローヒム編―(2021年製作の映画)
1.0
「全人類必見です!」
(公開日に書かれた、某サイトのレビューより)

 幸福の科学の新作アニメ映画を、プレミアシートで儲に囲まれながら鑑賞。相変わらず老人と中年女性が多い。監督はもちろん毎度おなじみ今掛勇だが、スタッフロールの中に今掛姓の女性を発見。どの部門か忘れたけど。クソどうでもいい情報ですね、はい。

ストーリー:3億年だか1億年だか前の地球には、宇宙に戦闘機を飛ばす科学力と剣や槍や甲冑が調和する素晴らしい文明世界があったとさ(庶民街は古代ローマ風)。中世の英国王子風ファッションに身を包み玉座でくつろぐ地球神エローヒムの下で、ダイバーシティあふれる生活を送る人間・獣人・レプタリアンたち。しかし、ケンタウルス座α(ベータだったかも)星人(ゴリラやワニ)が地球にダークマター入り隕石爆弾を落とそうとする。そこに、ベガ星から派遣された宇宙戦士ヤイザエル(CV. 以前 入信&芸能界引退でちょい話題になった女優)がギリ間に合って危機を救う。その後は迫り来る戦いに備えて修行したり、またカヲル君風の悪役が出てきたり、何の前振りもなく他の宇宙戦士が現れたり、最終兵器が核爆弾だったり(ダークマターどこ行った)、エローヒム神が時間を巻き戻して全部解決したり。
 
■どこから突っ込めばいいのか
 元々かなり西洋コンプの強い宗教だけど(パルテノン神殿をあちこちに建てているし)、今作は、キャラの名前やデザインからして、明らかにユダヤ教・キリスト教を意識していたことが印象的だった。
 今に始まったことではないが、ウケ狙いでやっているとしか思えないショボさが散見され、何だかツッコミ入れるのもエル・カンターレ(この宗教の最高神で現在は大川隆法として活動中)の掌の上で遊ばされている感があって、お布施するのが段々ツラくなってきた。
 オープニングからして、宇宙をバックに縦書きの解説が右に流れていく演出とか戦闘機のデザインとか、どう見てもマーベルを意識している主人公の女戦士とか、諸々つらい。前々作のメーテルといい、この人たちが大嫌いな中国がやっていたことと何も変わらないんだよなぁ。自覚しています?

■教祖直筆(設定)の挿入歌地獄
 とまぁ初っ端からなかなかキツいジャブを浴びせてくるわけだが、主人公のヤイザエル(キャプテンマー●ル)が地球に降り立つときの挿入歌で、早々にトドメを刺される。公式で聴けるので是非ご試聴されたい。このひどさは言葉では説明できない。歌詞で「お前は無敵だ! 地球の恐竜怖くない! 地球の魔物も怖くない! 人間なんて怖くない! 地球の動物怖くない!」とか言うのだけど、「いやお前、地球人を救いに来たんだろ」とかそんなことがどうでもよくなるくらいヒドい。
 すでに息も絶え絶えだが何とか鑑賞を続けていくと、これがまだマシな方だったことに気づかされる。他の挿入歌は、内容以前に掛かるタイミングが滅茶苦茶だ。お話を考える前に作り置きして、無理矢理ねじ込んだとしか思えない。なかでも印象深かったのが、「愛といっても性愛ではなく隣人愛が大事なのです」等々の説教からさほど間を置くことなく、「*おーエローヒム(地球で一番偉い神様)よー、お前が本当に愛していたのはパングル(地球で一番偉い女官)だったのかー。やっぱりそうだったのかー。(*繰り返し)」という謎の挿入歌が、単にパングルなる女が突っ立っているだけのシーンで唐突に聞こえてくることである。その前も後もこの歌と関係があるシーンは皆無である。
 ほかにも、画面にいる時間が3分もないキャラの情熱たっぷりのキャラソンPVがラスト間際に入ったりと、挿入歌がひっきりなしに話の腰を折る。しかしこの映画、むしろこの歌どもがないと絶対に寝落ちするレベルの退屈さである。いやはや神も仏もない。
 ちなみに「作詞作曲:大川隆法 編曲:大川沙也加」(という設定)。今時の教祖にはマルチな才能(設定)が必要ですね。

 この宗教の設定によると現世は「魂修行の場」らしいのだが、本作に最後まで付き合うという大修行を耐え抜いたことで自分のEXPは相当たまったのではないだろうか。


■作画について
 形式と内容の一致はいつだって美しい。本作のツルツルでペラペラのCGもまた、そのストーリーおよびメッセージと見事なハーモニーを奏でている。CG制作ソフトのサンプルデータに入っていそう。鑑賞後、ハリウッド大作のオーケストラをサンプリングしたようなBGMを聴きながらスタッフロールを眺めていると、「CG部門のスタッフ少なっ!」と驚愕と納得を同時に味えます。めちゃくちゃ金あるだろうに。
 もちろん、ひどいのはCGだけでなく手描きも微妙で、前作ほど悲惨ではない気がするが(すでに記憶がおぼろ)、けっこう誤魔化しが多い。今回とくに気になったのが口パクで、音ばかりかタイミングも合っていない。いや、いっそ口パクなら受容できるが、唇がやたら自由に動くくせに発音と合っていないから「何がしたかったん?」と聞きたくなる。