脳内金魚

ジョージタウンの脳内金魚のネタバレレビュー・内容・結末

ジョージタウン(2018年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

音楽がすごく重厚。事件の全貌が徐々に明らかになるにつれ、その滑稽さと劇伴の重厚さがどんどん乖離していくのだけれど、意図的なのかなんなのか。つかみに対して、内容が肩透かしと思えなくもないが、わたしは好きよ、こういうの。

主人公モットは言ってしまえば、重度のパラノイアなのだけれど、実はそれはエルサと出会ったことで完成されてのかもしれない。確かに被害者はエルサなのだが、ある種共依存関係のモットとエルサの共同作業で起こった事件とも言える。
ウルリッヒと言う名から、モットはドイツ系移民だろうか。劇中からエルサもドイツ人移民であることが分かる。自身の能力が正当に評価されない(と本人は思っている)モットに、エルサはかつての自身を重ねたのか、彼のためにコネクション作りに邁進する。観客からははじめ、彼の提案する政策の良し悪しは判然としない。だが、着実に人脈を広げていくモットに、見ているこちらも「本当に出来るやつなのか?」と錯覚してくる。
だが、途中彼の政策は失笑に付されるシーンが挟まれ、観客に疑心の芽を植え付ける。

エルサは90を目前に、日々心身ともに衰えを感じていたであろう。かつては有名なジャーナリストだった自分も、既に過去の存在となって久しかっただろう。このまま自分は忘れ去られ死んでいくのか。そんな不安もあったかもしれない。そうした中出会ったモットは、そんな彼女を称賛してくれた。食事に誘い、別れ際にはビズを寄越す。仕事人としてだけでなく、久しくなかった「女」としての自分も認められ、気分は高ぶったのかもしれない。そんな風に自分を肯定してくれたモットが否定されることは、エルサにとって自身が否定されたように思えたのだろうか。あるいは単なる認知力の衰えか。端から見れば(そして途中からは観客にも分かるように)モットの評価はもっともなもので、彼にのめり込むエルサはやはり奇異に見える。きっと、この出会いがうまく作用すればいい関係を築けたのだろうが、彼らはお互いによくも悪くも自己肯定感や自己愛が強かった。だからこその、あの結末だったのだろう。

ただ、前振りに対して結末が呆気なさすぎたかな。まぁ、ある新聞記事を着想に作ったと言うので、頑張って話を膨らませた方か。
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