映画スニーカー図鑑

ノースハリウッドの映画スニーカー図鑑のレビュー・感想・評価

ノースハリウッド(2021年製作の映画)
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Converse All Star Hi (主人公:マイケルと二人の親友:ジェイとアドルフが着用)

 誰しも幼少期や学生時代、はるか昔にお気に入りだった“思い出の一足”のような靴が、スニーカーに限らず何かしら有るのではないだろうか?自分の場合、中学時代に部活用に親に買ってもらったミズノのバドミントン・シューズだ。黄/白/黒の3色で、「体育館履きっぽさを減らしたい」とシューレースを水色のものに交換した。思えば、あれが初めてのシューズ・カスタムだった。お世辞にも良いセンスとは自分でも思えないが、アンダーソールに文字通り穴が空くまで履き潰したものだ。
 姉妹作『Mid90’s ミッドナインティーズ(2019)』では共同プロデューサーも務めた本作の監督・脚本のマイキー・アルフレッドは、12歳の頃からスケーター集団“Illegal Civilization”を率いていて、本作は彼ら製作の長編映画第一弾。キャスト、ロケーション、ジャンル等、姉妹作と関連するところは目立つものの、本作の方が青春映画としては伝統的な作りをしていて、高校などの卒業直後、学生から大人への移行期間である長期休み特有の“宙ぶらりん感”、そのアイデンティティの揺らぎや不安が脚本の核に有るため、作品のメンタリティ自体はむしろ『ゴースト・ワールド(2001)』などに近いと言えるだろう。制作年も舞台設定も比較的最近の映画であるにも関わらず不思議なノスタルジーを感じ取れるのは、良質な青春映画である証拠だ。
 そんな本作、スケボー映画であると同時に、紛れもなくスニーカー映画でもある。ライダー・マクラフリン演じる主人公は「チーム内では同じスニーカーで揃える」というスケーターの風習に沿って、何年も同じモデルのコンバースを履いている。冒頭、ほつれたレースの先端をライターで炙って整えるのも、スケーターたちの風習として有名なものだ(コンバースのソールに書かれた”NORTH HOLLYWOOD“のタイトルが出たときはソファから転げ落ちた)。主人公はチームを組んでいる地元のマブダチ2人との衝突、軋轢、和解を経て、“いつもの靴”と共にそれぞれの道へと滑り出す。いつかはボロボロになって、履き替えるときが来る靴と共に......王道だが、素晴らしくエモーショナルな小道具の使い方だ。厳格なのにどこかチャーミングな父親とのドラマも絶妙で、ヴィンス・ヴォーンは本当に良い俳優だということを再確認させてくれる。


衣装デザイン:Lindsey Hartman
登場・コラボ:登場のみ