kyoko

サウザンド・ピーシズ・オブ・ゴールドのkyokoのレビュー・感想・評価

4.0
1880年代のアメリカ西部を舞台に、父親によって身売りされた中国人女性が、その厳しい境遇の中でも自己を見失うことなく、やがて彼女の生きる場所を見出していく物語。
奴隷あるいは売春婦として扱われることの過酷さや白人による理不尽な華人排斥など、テーマ的にはいくらでも残酷に描写ができそうなものだけど、過激さではなく男たちに屈することなく「NO!」を突きつけたラルーの強さが観るものを惹きつける。ラルーを買った塚本晋也風味のホンキンはじめ荒くれ鉱夫たちもラルーの勢いに押され気味だし、彦星ジムに至ってはただの小っさい男だった。白人女性との交流をはじめ、黒人や雑貨屋のおじいとのやり取りにもラルーの頑なな表情から思いのほか人好きな性質が垣間見えるのがかわいらしい。あと魚釣るのうますぎ。

黒歴史に暗澹とするもの、あるいは人種差別に対する戒め(まあその要素はあるか)というより、純粋にひとりの女性の生き方に感服できる物語。
「#METOO」のあとであれば正当な評価が受けられたであろう、女性監督による男社会への抵抗によって埋没したこの作品を、観ることができたのは本当にありがたく思う。

エンドテロップ。そこはポリーじゃなくてラルーじゃないの?
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