O次郎

ワーロックのO次郎のレビュー・感想・評価

ワーロック(1989年製作の映画)
4.0
300年前の世界からやってきた悪魔崇拝者ワーロックと、彼を追う悪魔狩りレッドファーンとの闘いを描くSFファンタジー。原題の意味はそのものズバリの「魔法使い」とのことのようで。リチャード=ウィドマーク主演の同名の西部劇とは違って本作は日本ではソフト化はVHSのみ。

而してその内容だが、非常にオーソドックスなSFファンタジーもの。
300年前の世界で彼我の因縁が明かされる → 現代にタイムトリップしたワーロックが早速悪事を働き、それを追ってレッドファーンもやってきてヒロインと出会う → ヒロインに協力してもらいつつワーロックの目的の悪魔の聖典を探し回る → ついに見つかった悪魔の聖典を巡っての最後の決闘とヒロインとの別れ。
判を押したような起承転結で尖った特徴は無いものの、むしろそれを様式美として観るのが吉な作品。

その中でも見どころはVFXの特撮面。悪魔崇拝者が操る炎や獣面化、一日に二十祭老いてしまうヒロインへの呪いのビジュアル等、89年という年代を考えれば十分にリアルで今のCGには無い味わいの出色の出来栄えであり、さらにそこに『スタートレック』や『ランボー』で有名なジェリー=ゴールドスミスの印象的でおどろおどろしい音楽が場を盛り上げる。
逆を言うと、前時代の映画より技術面で頭一つ抜きん出た映像を提示できたがゆえに、物語面では捻りを加えないストレートなもので通用した次第だったのかもしれない。ワーロックが燃え尽きる炎もなかなか印象的。

キャストに関してはやはり、悪役ながら先頭にクレジットされているワーロックを演じるジュリアン=サンズの存在感。
そこまで残虐な素振りを見せず淡々とレッドファーン側を付け狙う様はスマートながら、ヒロインに足跡を釘で打たれて悶絶するシーンなどは愛嬌も有ってコミカルさも見せてくれる。

ラストはメロドラマ的に終わるかと思いきや、『私のあしながおじさん』的にサラッと少し切なく幕を閉じるのも却って余韻が有るのではなかろうか。
続編が製作されてはいるが、今の映画みたいに過剰な”引き”を入れたりしていないため、この一本だけで綺麗に成立しているのも好感触なオーソドックス佳作。
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