のんchan

マリとユリののんchanのレビュー・感想・評価

マリとユリ(1977年製作の映画)
3.8
ハンガリーの至宝メーサーロシュ・マールタ監督。なにか胸騒ぎがする感じがして続けてもう1本。

『アダプション/ある母と娘の記録』の時のように、こちらも年齢差のある女性2人が、不思議な連帯感を持ちお互いを支え合う話。

家長制度の残る70年代ハンガリー。それぞれの結婚生活に絡められる厳しい現実や抱える問題を浮き上がらせて本物の愛とは何か?を見つめ続ける。
観る側もどう進んで行くのか気持ちが凍て付きそうになった。


マリは結婚20年を超え、成人した子供と偏狭な夫との暮らしに不自由はないが、夫に愛情を感じないまま長い年月が過ぎ去っていた。仕事は紡績工場の女子寮長として住み込んでいることが多い。
そんな時、30歳のユリがアル中で暴力が絶えない夫から娘ジュジ(8〜9歳?)を連れて逃げてくる。そんなユリを気に掛け、規則違反を承知の上、寮長部屋に招き入れて生活が始まる。

ユリは夫に対して性の執着があると話を聞き刺激されるマリ。まだ40代で美しいマリだが、自分は20年間も愛情を持てずに夫しか知らずに性生活をしていたのかと、どうにもならない焦燥感を覚えていくのだった。

アル中施設に入院するユリの夫をどうすることもできなマリ。
酒を飲まなければ優しい父親を大好きな娘ジュジだけが真実を見ていたのが可哀想だった。


徹底した男性優位の世界で、女性への無理解に挑戦する彼女たちへの讃歌と感じた。
パーリンカ(ハンガリー独特の果物を原料とする蒸留酒)でも飲まないとやっていられなさそう。



※メーサーロシュ・マールタ監督は1931年生まれ。
同時代のアニエス・ヴァルダらと並び最も重要な女性作家としての地位を確立した監督である。
遅かりしだけど知ることが出来て良かった。もう少し追います。
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