こころとからだ

雨とあなたの物語のこころとからだのレビュー・感想・評価

雨とあなたの物語(2021年製作の映画)
5.0
完璧に面白かった。雨の切なさと星の眩しさと、地上の苦しみ、すべてが絶妙に互いを引き立て、必要として絡み合う。文学的な雰囲気を持つ作品で、これぞ求めていた韓国文学、韓国の美意識をよく表している。

日本だともっと出会うまでのカタルシスを描いた方が受けそうだが、すれ違いの美学というか、初恋、雪、失恋、待つこと、寂しそうに笑う顔など、韓国では悲観の美があるように思う。

カンハヌルは役にぴったりハマっていた。鍛え上げられた肉体こそ不相応なものの、雰囲気は童貞感がただよい、一途な想いも視点を変えればヤバいやつという風にも見え、キレイすぎないバランスをうまく取った。

カンソラもまだ浪人生役を素でやれるのは奇跡だ。ずっと美人だが芋くさい、ちょっと不良な役が似合う。twiceのモモにも似てるなとふと思う角度もあった。

カメラワークも素晴らしく、わざとらしくなく、視線を見せたいものに誘導したり、想像させたり、色合いも物語に合っている。

最後のオチも完璧すぎで、この後の2人について新たな視点を持って想像の余地を与える。最後の最後で、作品の視点をガラッと変えてくるなんて、なかなかオシャレなやり方だ。

劇中でもあったが、待つことが不幸なわけではない。主人公は感謝している。出会うことがベストだが、誰かを思い、願い、待つこと自体に意味がある。さながら誰かを思い、プレゼントを買うまでのあれこれの時間と同じだ。それは独り善がりかもしれないが、しょうもない人生において、それくらい純粋でムダな時間があっていい。

独身は小心者で、既婚者は臆病者という台詞は極端ながら何か納得できる。今後犬を飼うならチュッポク(祝福)と名付けよう。