lingmudayan

理大囲城のlingmudayanのレビュー・感想・評価

理大囲城(2020年製作の映画)
3.0
香港で2019年に起きた逃亡犯条例改正案反対デモを扱った映画と聞くと、デモ隊を英雄視したり、有象無象の香港人が一丸となってデモに参加したりする内容を想像してしまうが、この作品は意に反し、香港理工大学に立て籠った若者たちの混乱を大学内部から捉えている。彼らは警察の包囲が続く中で疲れから消耗していき、脱出のタイミングを巡ってお互いを罵り合うまで激論を交わす。そして若者たちを解放するために大学に入ってきた教師たちによって立場が分かれていく。ラストで教師に付いて脱出するか、大学に残るか逡巡する若者をじっくりと捉えた映像は、ドキュメンタリーでなければ出せない緊張感に満ちている。
結局のところ民主主義陣営が権威主義体制を信用することができないのは、権威主義体制が内部からの体制批判や挑戦を実質的な形で認めないからだ。ここ数年で中国政府に乗っ取られてしまった香港で体制批判的な作品がおおっぴらに制作されると考えられるだろうか。一方の民主派側では今作のようにデモ隊自身の混乱をありのままに映した作品を出している。だから民主派側は信用できるし、支持すべき側と考えることができるのだ。
lingmudayan

lingmudayan