くりふ

まばたかない瞳 バンガロール連続誘拐殺人のくりふのレビュー・感想・評価

4.0
【インド警察、腐敗のあとさき】

IMW2021の上映にて。ふつうに面白かったです。

アヌラーグ・カシャップ演じるシリアルキラーに振り回される警察とCBI(中央捜査局)の物語…と思っていたら、それは第一層。そこからおお!そこまで剥きますかと。

最後に出てくるのは?…オチに向かうにつれ、説明的になるのは残念ですが、そこはタミルな腕力でねじ伏せています。

アヌラーグおじさんが喜々と異常者を演じていますが、どこか風通しよい演技をしており、憎みながらも惹かれてしまう。

で、彼と対峙するナヤンターラがいかにもな、タフな美人捜査官。この対立構図までは、ハリウッド映画でもよく見かけますが、そこに捜査官弟アタルヴァー君の、失恋エピソードをソング&ダンス含め、こってりと仕込んでくるのがインド味。

でも、これが後々、ちゃんと物語を盛り上げることになる。

失恋相手のラーシー・カンナーは爽やか美人で、艶々ナヤンターラとのコントラストが中々、絶妙。

で、タイトル“まばたかない瞳”の意味が明かされる終盤に突入すると、今ではタミルのトップ女優であるという、ナヤンターラだからこそできた物語だったのだ、と唸らされる。愛の底力を突き付けますね。

役者のフィジカルパワーで168分みるみる押し通し、多分ツッコミどころ豊富なのに、そのスピード感から気にならない。

マンガみたい、でもありますが、インドに横たわる日常的腐敗があるから成り立つ物語で、振り返ると、そこはコワイですね。

しかし最後、ささやかな愛の復活に、自然と涙がにじみました。

<2021.6.16記>
くりふ

くりふ