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ゴリアテのkyokoのレビュー・感想・評価

ゴリアテ(2018年製作の映画)
3.8
ゴリアテというタイトルに「ラピュタ?」と思ったのは私だけではないと思うけど、そもそもラピュタに出てくる飛行戦艦がなにゆえ「ゴリアテ」という名前なのか、一ミリも考えたこともなかったのでこの機会にググってみた。旧約聖書に登場する「ダビデに倒された巨人兵士ゴリアテの話」に由来するらしい。

家族を養う重責を担わされた17歳。
それは逮捕された父親の裏稼業を引きつぐということだった。

真っ当な労働者としての道を模索していた我が子を、絶対的に服従させ、闇社会に引きずり込もうとする父親にとにかく腹が立つ。完全なる虐待。病気の母親の「だって仕方ないじゃない」感はさらにムカつく。
父もかつては誇りを持った労働者だったらしいけど、福祉社会から弾かれたら最後、貧困から抜け出すのは難しい。スウェーデンが抱える社会問題の含みも分かるけども、父親に知性がなさすぎる。

この作品における「ゴリアテ=弱小な者に倒される強大な者」とは父親で、その巨大な存在に対峙するダビデが息子ということになるのかな。
確かに息子は強くなった。でもそれは単なる負の連鎖のはじまりに過ぎず、家族への愛にがんじがらめにされながら、最後は男として家長としての自負をうっかり得てしまったようにも見える彼が、そこから抜け出すことはもうないのかもしれない。ケン・ローチ作品に通じる苦しさがあった。
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