空海花

ジャズ・ロフトの空海花のレビュー・感想・評価

ジャズ・ロフト(2015年製作の映画)
4.0
1950年代半ば、マンハッタン
「6番街のロフト The Six Avenue Loft」は
連日連夜、気鋭のジャズ・ミュージシャンたちが集まり、セッションが繰り広げられていた。
家族の元を離れ、ここに住んでいた写真家ユージン・スミスは録音機を買い込んでその模様を録音し、撮影した。
その写真や録音を元に構成した作品。
1999年、ユージン・スミスの研究者であるサム・スティーブンソンがスミスの写真アーカイブにて大量のオーディオテープを発見したことから全てが始まる。
2009年、書き起こし等を行い書籍を発表。これを元に公共ラジオ局WNYCとNPRがラジオシリーズを製作。当時番組の製作・脚本・ホストを務めたサラ・フィシュコがドキュメンタリー映画として再構成した。

セッションは真夜中。皆が明け方帰る時には目の前が花屋の問屋街で太陽と共に街に花が咲くのが素敵。
窓枠が額縁🖼
ロフトに集まったのはサム・スティーブンソンの他、カーラ・ブレイ、ズート・シムズ、ホール・オーヴァトン、ロニー・フリーといった名うてのミュージシャンたち。
中でもセロニアス・モンクのセッション映像が貴重らしく、内容も良かった。
コラボ映像や音楽、打合せ風景なども垣間見え、興味深いし楽しい。
このユニークなセッションは8年間続いたそうだ。

ジャズ・セッション映像メインかと思いきや、これは写真家ユージン・スミスのドキュメンタリーでもあり
彼らや息子、弟子たちの証言により、
ユージン・スミス、そして音楽家たちの人となりが伝わってくるのがまた別の魅力。
『MINAMATA』のレビューにも書いたが、そこで出てくるエピソードももう少し詳しく知ることができる。
中でも壮絶なのは太平洋戦争の沖縄戦でのエピソード。生死を彷徨うような重傷を負っている。
また彼は「写真界のレンブラント」と呼ばれているらしく、彼の写真の光の輝き、美しさの理由がわかって興奮した。
まさに絵画的、あの作業、私もやりたい!(暗室での現像経験あり)
『MINAMATA』で危険な目に遭うのなら、実はネガだけ先に送るという手もあったんじゃないかと思っていたが、彼の完璧な理想主義では確かに不可能だと思った。
水俣以外の素敵な写真もたくさん見られて幸せでいっぱい。
あの張り紙も彼の部屋の扉に貼られていた。


以下ドキュメンタリーだし多少内容に触れてもいいよという方は読んでください⚠️


借金だらけだったのに当時最新の録音機を買い込んだり、階下の自室からケーブルを引き出したり、なんとドリルで天井に穴を開けてマイクを入れて録音していた!(笑)
演奏だけでなく、会話やTVニュース、電話の声も録音。
写真家って記録魔なのかもしれない😁
映像化にあたっての権利関係、編集は大変そうだけれど。
当時のニューヨーク・ジャズ・シーンの貴重な記録である。

また家族とりわけ子供たち(実は子沢山の大家族)への愛情は感じるものの
仕事へのこだわりが強すぎて、一緒に過ごす時間もなければお金もなく、後年は酒やドラッグにも溺れていく。
酒やドラッグは別としても、こんなに仕事の事ばかりでは家族を顧みる時間はない。
その孤独感にはシンパシーのようなものを感じてしまった。(いやそんな仕事してないけれど、そういうバランス感覚が私にはないと思っている)
結局、彼は家族と離れることになった訳で、人としてどうかというと良くはない。
だが、真実と人間愛を求めた写真家ということに異存はないし、その人間味が愛おしい。
この作品を観たらよりそれが伝わるのではないかと思う。

『MINAMATA』の部屋の再現はここが参考になっているのだろうか。
そして「MINAMATA」は、彼の生前最後の写真集となった。
彼は戦争中の負傷や水俣での取材時に受けた暴行による後遺症に悩まされ続け、
78年、脳卒中の発作で59歳で逝去した。
合掌。


2021レビュー#187
2021鑑賞No.419/劇場鑑賞#87


サントラ、二つの写真集…まだ迷ってます(助けて~笑)💸💸💸
パンフは思ったより写真少なめ(´・ω・`)
デザインは🙆
空海花

空海花