木蘭

渇きと偽りの木蘭のレビュー・感想・評価

渇きと偽り(2020年製作の映画)
4.5
 オーストラリア映画人たちが作り上げた上質のミステリー。

 家族を殺して自殺した幼なじみの葬儀のために故郷に戻った警官が、事件の真相と自身にまつわる過去の事件を解き明かしていく・・・という物語。
 決して目新しい物語では無いし、ともすればミステリーTVドラマ・シリーズの1エピソードにあってもおかしくない程度のプロットなのだが、それを丁寧に描き上げている所が素晴らしい。

 荒涼とした大地を貫く街道を走る車だの、乾燥した森の中を流れる川だの、丘の上の巨石だの、「ぐっだい!」という挨拶だの・・・僕らの知っている(?)オーストラリア!というシーンがあふれているのだが、事情に精通している人が観れば、もっとオーストラリアらしさや、そこに暮らす人々の機微にあふれているのではないか?

 奇をてらうこと無くオーソドックスに描く手法に好感が持てるし、原作の小説では深く描いているだろう部分も、時間の制約や映画の文法では語る事が出来ない部分は、なんとなく匂わせるだけ・・・という手法のセンスが良い。
 尖ったり、特段に個性的な映画では無いし、特筆すべき部分は何か?と問われると上手く説明出来ないが・・・忘れがたい作品になったのは確か。
 エンドロールで「Under The Milky Way」が流れた時には、胸が熱くなったよ。
木蘭

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