ラピュタん

渇きと偽りのラピュタんのレビュー・感想・評価

渇きと偽り(2020年製作の映画)
4.1
自分が殺人者だと疑われた忌まわしい土地を彼は再訪する
初恋のエリーが亡くなったあの川はすでに干上がっていた
思い出の川の辺りで、彼は昔の自分とも向き合うことになる

ドライなオーストラリア製サスペンス
西部劇とは異なる独特のタッチが味わえます

Whodunnit story with two sad fire on dry-up land

エリック•バナは、わたしにとってはトロイの英雄ヘクトル
マッチョなのにどことなく表情に憂いが…
そんな彼の魅力が充分に生かされていました

渋い作品で、暴力をアクションとして直接描くことはない点からも好感度の高い作品でした
青年時代の仲間との思い出のシーンと現在が、違和感なく紡がれているのが見事でしたし、ダレることなく最後まで緊張感が続きます

渇きの帰結としての火🔥
偽りとは、狭い世界で生きていくために不可欠な知恵であり、自分を守るもの
そして渇かすもの…

胸をえぐられるような切なさが、抑えた演技から滲み
バナならではの味わいがありました

その渇きとは?
どんな渇きなのか、何の渇きなのか、誰のものなのか…

謎は複数ありそうです

とても丁寧に準備された、乾いた美しさのある作品でした


⭐️銃口から放たれた炎が、あああ
 炎のシーンは悲しい
⭐️サングラスがとっても似合っていました
 バナさん
⭐️岩を割って伸びる樹は素敵
 その上に座っていた仲良し四人組
⭐️おどおどした新米警官は味のある演技
 でしたが、味のある脇役の魅力がもっと彩りを添えていたら、より広く受けるかも?
⭐️10月13日現在で上映館は全国に7ヶ所
 レイトショーを独占してしまった…
 もっと観る人がいてもいいのにな…


以下ちょこっとネタバレ
〜。。〜。。〜。。〜。。〜🌿





2つの事件の繋がりは?

犯人探しの点からみると一見関係ないから肩透かしのように感じがち そこで…

繋がりは、フォークの中にあった
つまり犯人ではなくてルークによって繋がっている
彼にはどう繋がっているかは分からないという点が「つながりの謎」なのでしょうか…きっと

・親友だったはずのルーク
・すべてを消去した過去の自分
   ↓
 ルークの死が、その過去に彼を引き戻す
 避けてきた己の苦しみの中へ

自分の嘘というトラウマを癒すために彼は関わっていく必要があった、という贖罪のストーリー

嘘に対する彼の潔癖は、逆に彼の心の傷の深さを表しているのが切ないです

犯人は人知れず秘密・嘘に苦しみ、犯人でなくとも、嘘が大切なものを壊していった辛さを味わう自分および周囲の人たち…
じわわんと浮上するのは「嘘の苦しみ」
でも、生きていくしかない

弾丸より多くのものを奪いかねない嘘は、心までもを長く乾燥させてしまう副作用があるというメッセージも受け取れるでしょう
普遍的なテーマですね!

三者三様の渇いた涙が、印象的でした
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