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パンケーキを毒見するのbibooのネタバレレビュー・内容・結末

パンケーキを毒見する(2021年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

いやあ、ひたすら辛い。この国に住んでて年々苦しさが増してる。就職に関してはある程度自分の行動による結果だとはいえ、賃金が上がらない上に、毎日毎日週刊誌やSNSで発されるのは政治家の差別的な発言と不祥事。そりゃみんな余裕も無いし、街中でキレるジジイも増えるよね。皮肉を交えつつアニメーションでわかりやすく作られていたのが良くて、菅さんの人となりが何となく透けて見えてくる感じもしたし、近年の日本全体の政治バージョンで続編を作ってほしいと思った。
問題を突かれてもひたすら具体的な返答をしないことで、周囲の政治に対する興味自体を無くすという作戦・やり方が、意図してかしてないにしてもゾッとした。クライマックスで大学生が「投票しなくても死なない」と能天気に言ってたけど、心は着実に死んでいってるし、そろそろ物理的にも死ぬんちゃうかと危惧してる。
菅さんが押し通したことで動いたり開始されて今も続いてる事柄が割とあって、総理大臣の時は基本蝋人形のような表情で伝書鳩をやってるイメージしかなかったけど、今作を見て菅さんもバカではないしむしろ黒い波をうまくサーフィンしてきた人なのかもということがわかった。だからといって国民もバカではない。悟るペースは早くないけど、日本が詰んでることに気づいた人たちがコロナ禍を経て増えてると信じたい。
劇中、政治家たちの黒さを見た目に反して内容が過激なアニメで見せたりしていたけど、そんな描き方をされているのに知ってか知らずか、特典の突撃取材の映像に映る菅さんは全っっく気にしてなかったのも引いた。菅さんの矛盾しまくりの発言に関しても、これでもかと並べられてたけど、近年の日本の政治って本当、全然笑えないコントのようだ。
日本は先進国で、文化的にも海外に一目置かれててブランド力があるという40年前くらいに生まれた実感が幻想になってもなお、いまだに信じ続けている人が多いのが震える。

劇中の菅さんしかり、「自分のために」というエゴが今テレビで見かける政治家たちの言葉の端々から漏れ出てしまっていて、その「自分のために」が結果的に”みんなのために”になるような選択肢を広げたり柔軟な制度や法律を作るではなく、”自分の地位をとりあえず死守するために”になってしまっているのが苦しい。”自分が生きやすくなること”は”みんなが生きやすくなること”に繋がれるはずなのだが、トップがエゴやプライドを死守することに向かってしまうとおしまいだ。自分が暮らす国の手綱を引いてるのが誰なのが今一度考えたし、情報を正しくキャッチする能力が必要だと改めて思った。

興味深いドキュメンタリーだったけど、小さいテレビ画面で見たからなのか、個人的にはインタビュアーの声が聞き取りづらすぎて(人によってはインタビュイーの声も聞き取りづらい)、半分くらい勘で理解した。おじさんの低めのしゃがれ声は通りづらいし、ましてやインタビュアーは多分マスクもしてたりするだろうから、専門用語も多い題材だし、せめてボタンで字幕を選択できるようになっていたらより良かった。
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