囚人13号

街の風景の囚人13号のレビュー・感想・評価

街の風景(1931年製作の映画)
4.5
ヴィダーは労働階級者を扱うと上手い。冒頭の数カットに様々な職種の大人と子供、猫までもが登場するがこれは『ビッグ・パレード』も同じ。
見せない美学とも言うべきか、屋外での物語なのに舞台的な閉鎖感があった。演者は母親役のエステル・テイラー(ジャック・デンプシーの嫁)と娘役のシルヴィア・シドニーの顔がそっくりで本当の親子みたいで、二人が不安そうに体を寄せ合った瞬間のアップが印象的。

『群衆』(世界恐慌前夜の1928年作品)でも子供が自動車に轢かれた時に人々が集まってきたが本作との明らかな相違は野次馬という行為に及んだ動機であり、前者が懸念であるのに対して、後者は単純な興味でしかない。
世界恐慌で人々は他人の不幸に良く悪くも敏感になっているのだ。狭いアパートに押し寄せる群衆の俯瞰ショットは失業者たちが職を求めて窓口に押し寄せている(『モダン・タイムス』を思わせる)ようでゾッとする。

冒頭とラストで替歌を歌いながら遊んでいる子供たちが反復されるが、同年公開の『M』を連想させずにはおかない。世界恐慌の混乱と、台頭しつつあるナチスに対する不安が国境を超えて共鳴し合う瞬間を見た。『街の風景』なんてタイトルもいいじゃないか。
囚人13号

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