ca324

ナショナル・シアター・ライヴ「メディア」のca324のレビュー・感想・評価

4.0
今年4月にガンで他界した主演のヘレン・マックロリー追悼の再上映。
同タイトルを他演出で見たことがないので比較できないですが、子殺しの代名詞的なキャラクターを激情家の狂女としてではなく、苛烈な復讐に至る心の動きを有り得るものとして順序だてて表現している印象。それにより、そもそも夫や周囲にこんな非道を働かれておいて尚、感情に支配されることはそんなにダメなことなのか?という疑問を抱かせる。感情が高ぶって当然では?自分の人生が全部覆されるような裏切りなんだよ。
そして子殺しにまで至る物語の結末は、作者が物語をセンセーショナルにしたいだけでそもそもメディアの思考が行きつく先としての必然性はないなぁという気がした(少なくとも今作の演出法ではそう見えた)
クレオン王は自分の娘のためだけに人として統治者として守るべき倫理に反したのを棚に上げ「何をしでかすか分からないから」とメディアの性格を理由に国外追放を迫り、ジェイソンは後付けっぽい不貞の言い訳を「事前に話したところでお前は理解しない」とやっぱりメディアの性格のせいにする。
二人ともあたかも自分たちは冷静で、お前は感情的でそこがダメと言いたげなのがすごくずるいなぁと思う。メディア側としたら感情的になれば思うつぼだし、冷静に対処したところで=泣き寝入りでしょ、手詰まりすぎる。
本編前のメイキング部分で当時は男性のみのキャスト、観客も男性のみだったという言及があり、彼らは一体どんな気持ちで演じ、見ていたのだろうなと思うと、非常にグロテスクな作品。
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