このレビューはネタバレを含みます
安楽涼監督は、出身地である東京、西葛西を舞台にした作品を撮ってきた。そこには、安楽監督自身のリアルと、片山監督が描くシナリオの繊細で深い内省が、網の目のようにからまって、私たちの眼と心に、映像の奥の深い残像を刻む。
それと同じ気持ちで、自作を公開したとき過ごした神戸の場所、そこで日々築かれていった人とのつながりのリアルで、また片山監督と共に力強いフィクションをつくりあげた。
根底にある強度。監督たち自身が埋め込まれ細胞分裂して映像になったかのようです。
初めて『1人のダンス』を観たときに感じた“この映画、いきものだ!”、という感覚。この感覚が体の中を走っていくんだよね。
安楽監督と片山監督がつくり出す、フィクションであって、エネルギーがリアル、というこの感覚が好きです。ほんとくせになる。一度知ってしまったら、唯一無二なことが分かる。
で、この映画の具体的な感想を書きますと、(ややネタバレします)
主人公の男女2人も、周囲の人間も、具体的なことを何一つ口にしない。
「察してくれ」もいいかげんしろよと言いたくなりそうになって気づいた。
笑う日に戻りたいと思ってるはずなのに、笑うことができてない男。
ほんとの思いをおさえておさえておさえこんでたら、わたし、顔だけ笑ってたんだ、と呆然とする女。
あぁなんてめんどくさい、でもなんて必死に生きてんだ、と。
そして、「めんどくせえ」と言いながら、いつも現れる赤いジャケットくんは、このふたりにだけ見える、ふたりをつなぐ天使だ、と。
3人をまとめてぎゅっと抱きしめたかった、最後のシーン。安楽監督の、映画づくりにおける優しさと信念を感じました。
んで、音楽がいつもステキ。
トークで発表がありました、K'sシネマでの単独上映。2022年2月を予定とのこと。👏