ひたすらにジャンヌ・ダルクの異端審問裁判の様子を映像化したというような作品。
サイレントであるから、役者の表情がより強烈で、審問のシーンでは緊張感がひしひしと伝わってきた。ショットは殆どが人物のアップで、ひとりずつ細かく映される。
その単調さが少々退屈で、眠たくなってしまった。
この題材を映像化したことは、映像的芸術性とは遠い距離にあったかもしれないが、歴史的なプロパガンダとして、人類に強烈な印象を与えたことは事実だろう。
痛々しく追い詰められてゆくジャンヌを通して見るこの世界は、信仰を隠れ蓑にした人間の陶酔や、信じるという行為を絶対視した人間の都合の良い無思考さが露わになっていたと思う。
最後のシーン、ジャンヌの火刑を仰ぎ見る群衆からは涙が、刑を課した聖職者達からは思考を辞めた冷たい眼差しが向けられていた。