フロントスカイ

裁かるゝジャンヌのフロントスカイのレビュー・感想・評価

裁かるゝジャンヌ(1928年製作の映画)
5.0
『奇跡』と共に、一度は必ず観るべき映画と昔から思ってたデンマークの映画作家カール・テオドア・ドライヤーがフランスで製作した『裁かるゝジャンヌ』。
「カール・テオドア・ドライヤー セレクションvol.2」の最初に鑑賞。
無声映画の最高傑作であると共に、世界映画史の金字塔のひとつとしても名高い1928年公開の名作。

「凄い!」としか言いようがない。全編全てに隙がなく、なんという緊張感だろう。
ジャンヌ・ダルクが、宗教裁判によって処刑されるまでの一日を裁判記録に忠実に描いた作品だが、偉大な英雄としてではなく、あくまでも一人の19歳の人間として、死の恐怖と神への忠誠心という魂の葛藤が終始画面を通じてひしひしと伝わってくる。

徹底したジャンヌの顔のクローズアップ。その表情は真に迫ってきて、恐怖におののく表情には、苦悩・弱さ・絶望など極限の感情が圧巻の映像表現で映し出され、そして最後は神を信じ、自分の信念を貫き火刑に向かっていく。
普段から信仰心の薄くて周りに流れやすい性格の私。驚き!この人並みはずれた信仰心の強さと言ったら...

100年近く前のこの1928年のサイレント映画。すでにこれだけのリアリズムでもって、神々しくて、崇高で格調高い精神性をもったこの作品は、予想に違わぬ傑作だった。