まや

月光の囁きのまやのネタバレレビュー・内容・結末

月光の囁き(1999年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

前から気になっていた作品。配信等にも無いため気になって鑑賞。すごく変な映画だったけどすごく好きだった。

まず設定がすごい。同じ剣道部に所属する先輩、後輩である高校生2人が主人公。朝練を2人でするようななかで、お互いなんとなく好意があるのがわかっている1番ウキウキする時期。それから間も無くして2人は付き合うことに。甘酸っぱい高校生の恋愛模様が主なテーマではないからここまでがすぐに展開される。

ここからがすごい、お互いの本質的なものがお互いに関わりを持つことで、表出してくるのだ。戸惑いながらも変化していく2人の様が丁寧に描かれていて、感情移入はできなかったけど、変化の過程が急では無いからすんなり受け入れられた。これがすごいなと思った。途中剣道部の主将と彼女が付き合うことになるが、この剣道部の主将は本当に普通の人で、普通に彼女が好きだけど、2人のプラスとマイナスの関係性には入ってこれないからそこから追い出されてしまう。それくらい2人の世界というか、2人がなくてはならないし、代わりのきかない存在になっていく。否定したくても一度その自分を知ってしまったら引き返せないからこそ、その人といると嫌なのに、その人といないと自分でなくなってしまうその矛盾が描かれていく。

そして最後のシーン。本当にここが最高だった。2人で同じ方向を向いて、友達を誘って旅行でもふらっと行こうと話すシーン。もう2人でいることを受け入れているし、お互いの違う方の目が包帯や眼帯で隠されているのも上手い。それぞれの目となっているということで2人で生きていくことを示唆されている感じがした。

それと忘れてはいけないのがスピッツの「運命の人」本当曲のイントロが入ってくるタイミングが神がかっていた。曲の歌詞とも不思議とマッチしていて最高のシーンになっていた。泣くような映画では無いのにその曲も相まってちょっと泣けた。

変な設定の中にも、その人といること2人でしかいられないという世界に至るまでが本当に面白かった。その2人だけの関係性が描かれていて、他に見ない作品だった。

追記:最近見た『ママと娼婦』で出てくる「愛に執着すると死に通ずる」を体現しているようで、この言葉が自然と浮かんできた。映画観て他の映画のセリフを納得する瞬間が多々あって、国が違うのに共通していて面白いなと思った。
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