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東京クルドのIのレビュー・感想・評価

東京クルド(2021年製作の映画)
5.0
非人道的な対応が許されてしまっている入管の現状。とても胸が苦しくなった。

オザンの感情的な言葉が胸に刺さり、ラマザンの冷静で知的な訴えにハッとさせられる。

「自分は虫以下。ダニ以下。」オザンのそんな自分を卑下する言葉。多数の言語を話せたり、体力もあるし、様々な能力を持ち、可能性に溢れる若者なのに、彼の仮放免という立場、家庭環境やいじめの過去等が彼の可能性を殺しにかかる。希望をもっては壊され、絶望の淵に叩き落とされる。
そんな何もできない自分に比べて虫の方が自由だと、そりゃ思うよなと。「くだらねぇ」呆れと諦めが混ざった言葉。そんな言葉しか出なくなるよ。

オザンが入管の職員と話す。仕事してはいけない。仕事しないと生きていけない。それは自分たちで何とかしろ。何で仕事してはだめなのか。それは法律で決まっているから。じゃあ法律はいつも正しいんですか。真っ当な意見を言うオザンに対してそれをあしらう入管職員。

法律はいつでも正しいということはないし、入管に関する法律は明らかにおかしいことだらけで、それは人間の権利を無視した政治的な側面が色濃く反映されているからだ。
そもそも難民申請を求めた裁判で勝訴したのにも関わらず、結局難民認定されなかった件が5件もあるらしい。法律もクソもない。

他の国に行け。そんな冷酷な言動や態度が当たり前にまかり通ってる世界。それがこの日本で普通に起こっているという事実。自由が奪われ、体調が悪くても死ぬまで放置され、理不尽に収容される。まるで最近観ていたディストピアドラマの様な世界だ。

朝日新聞の監督取材記事で、監督は職員の嘲笑するような言葉に対して、冷静にこれが大方の日本人の意見だろうと仰っていた。その通りだと思う。多くの日本人にとっては他人事だろう。職員も最低だが、上の指示に従うだけの職員に何を言ってもはじまらない。腐った根本からの変革が必要だ。

実際に私もこの映画を観るまでは、移民に対して良くない事が行われている、助けを求めても受け入れてもらえずに収容されたまま亡くなった方たちがいる、ということを漠然と認知する程度で、なんで収容されてるんだろう、どういう人が収容されてるんだろうかまるで分からなかった。
それが、今作品を観ることで、当事者たちの声、生活を目の当たりにし、少しでも事実を知ることができて良かった。映像のインパクトは大きく、ショックを受けた。
何で収容されているのか、理由もない意味が分からないことだらけで、入管に関する理解はさらに遠のいた。

カメラを通さない当人たちの現実はもっと厳しいだろう。
自分に何ができるか。入管に関する情報を追って、できることは小さなことでもやっていこう。

Twitterのハッシュタグから始まった運動、#FREEUSHIKU をはじめとした活動を追っていこうと思う。
そして、投票しよう。
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