Morohashi

梅切らぬバカのMorohashiのレビュー・感想・評価

梅切らぬバカ(2021年製作の映画)
4.0
そのタイトルからもわかるように、剪定をしないことで健全に伸びるはずの木全体をも脅かすことを意味している。
実はこの格言には続きがある。「桜切るバカ、梅切らぬバカ」。
桜の場合、無駄な剪定をすると枝が腐りやすくなり、梅は適切に剪定しないと樹形が崩れて花や実がつかなくなるという意味で、つまりは個に応じた対応をすることを示唆している。

この映画では、登場人物たちは画一的な処遇を求める傾向がある。
例えば、ゴミの分別にしても、人々はあらゆるものにレッテルを貼りたがる。
人々は危険だと感じるものについては素早く判断する一方で、それが安全だとか無害だとかというふうに認識を変えることが難しい。

映画では、将来社会から疎まれる可能性のある老人たちも積極的に障がい者の排斥を訴える姿が取り上げられている。
でも「要らない人たち」を排斥する社会に協力することで、自分自身の立ち位置も危うくなるということにまるで想像力が及んでいない。

ぼんやりと共存というテーマが提示されるが、その具体的な方法や解決策についてはまだ明確な答えは出ていないし、私自身も自分の考える策が偽善なのではないかと思い悩んでしまう。

とはいえ作品の中では少年の父親が少しだけ成長を遂げる様子を描いていて、これが嬉しかった。

そしていわゆる映画的な表現はあまり多くないのが残念。
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