真綿で首を絞められるような息苦しさ
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時代に取り残され過疎化に苦しむ孤島・猪狩島。島の青年・泉圭太が手がけた黒イチジクが高く評価されたことで、島民たちには希望の兆しが見え始めていた。そんなある日、圭太の農園で働きたいという男と、彼を支援する鈴木という老人。男は鈴木老人を絞殺すると、フラフラと島内をうろつき始める。実は男は小御坂睦雄というかつて少女誘拐暴行事件の加害者だった。愛娘の失踪をキッカケに誤って小御坂を殺してしまう圭太。大事な家族や島の復興のため、幼馴染の田辺、新米警察官の守屋と共謀してこの殺人を隠蔽することに決めるのだが…。
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デスノートの二人ふたたび。今度は共犯だ！
あんまり期待してなかったけど、アトロクで「『見えない目撃者』くらい面白い！」て評判を聞いて見に行った！
ツッコミどこは多いけど、ゾクゾクするような展開の連続で超面白かった！٩( ᐛ )و アヴァンタイトルの出方がカッコ良すぎる。痺れる。
筒井哲也の漫画原作。未読で良かった。倒叙ミステリーの語り口で、加害者側のサスペンスを描いた語り口はコーエン兄弟の「ファーゴ」のよう（徐々に計画が破綻していく様子もコーエン兄弟っぽい）。 狭いコミュニティの因襲深い濃密な関係性は、横溝正史作品のおどろおどろしさっぽくもある。コーエン兄弟が横溝作品を映画化して、ユーモアを抜いたらこんな感じなのかも。
序〜中盤までは予告編から想像される通りだけど、その先の展開の暗さ・悲惨さが面白い。島民それぞれの思惑や正義感が、猥雑なノイズとなって主人公たちに降りかかる様がスリラーであり、コミカルですらある。
予想を次々裏切りたどり着く４幕目の驚き。
あの真相は意外だけど、その後の着地については「そうはならんやろ」しかない。少なくとも島医者の先生はバッチリ共謀が疑われるだろうし、起訴されるっしょ。最後の最後に力技なオチになっちゃったのは残念だけど、そこまでが予想外の展開の連続すぎて何でもアリになっちゃった感もあったのかも。
松山ケンイチの田辺純が素晴らしい。
友情に厚いが余所者にはクールだったり、圭太の娘を我が子のように可愛がる姿の反面、ある種の怨念の集結点として見てるあたりおっかない。小さい人間じゃなくて、副産物としか見てない感じが怖い。
ライフルを狙いすますラストショットが示唆的で良かった。
顔つきから察するに「BLUE／ブルー」と同時期の撮影だったはずだけど、柔和な笑顔の奥に暗い怒りを湛えてた演技と違って、粗雑だが一本気で誠実な男を好演。役者さんてホントすごいなー。
天才・神木隆之介が演じた守屋。長く島を離れていたせいか、イマイチ島に馴染めてない雰囲気がイイ。狭いコミュニティの濃密で閉じた関係性に居心地の悪さを感じつつも、誠実に自分の責任を全うしようとする。心身ともに、背筋をピンと伸ばした姿が清々しい。物語の発端となる選択をしちゃったせいで（実直で優しい青年だからこその選択だけど）最後までその選択を逡巡・後悔する。物語からの去り方が悲しすぎる。母子ともども猪狩島の人間らしからぬ雰囲気もあって、元々は都会から移住してきた親子なのかもしれない。DV夫から逃げるように縁もゆかりもない離島に…とか二人の背景を妄想すると悲しみが深まって良い。
いるだけで不穏かつ気味悪い小御坂を演じた渡辺大知。殺されてもやむなしなドクズである一方、自分自身の悪業を受け入れ、いつかろくな死に方はしないであろうことを覚悟してる。他人を踏みつけることに躊躇はないけど、利用するほどの小賢しさはなくて、欲望のままに生きて他人に理不尽を押し付ける。愛飲してるのが甘ったるいイチゴミルクなのがまた、嫌ったらしくて良い。
個人的にあまり好きになれない波岡一喜。今作だと感じの悪い農林水産省？の小役人で、軽薄さと調子の良さ＆感じ悪さが同居してる小役人を好演してて良かった。やはりこの人はこういうバカかクズの役がハマっていい。（本人は誠実で真面目ないい人なのかもしれないけど）
フード描写で見ると、なんといっても黒イチヂク。薄皮一枚下のグロテスクな見た目は、人間の卑近で冷酷な正体を比喩してるようだし、狭いコミュニティで赤黒く蠢く島世界の暗喩のよう。それを無造作に貪り食う小御坂睦雄の薄気味悪さ。土足で他人の生活に踏み入ることに、なんの躊躇もないのが分かる。
睦雄登場シーンの前に家族でお弁当を食べるシーンがあって、しかもおにぎりは愛娘が愛妻と一緒に作ってくれたのがいいフリ。絵に描いたような幸せな一家で、愛娘は父・圭太のために水筒の麦茶を注いであげてて超可愛い。父親ならずとも、ド変態から守りたくなる。転じて、この子（我が子）にド変態が何かしたなら平凡な一般人でも簡単に殺意を持っちゃう。誰しも嫌う悪役を嬉々として演じてる感もサイコパス味あってよかった。
13本目
