幽斎

死霊のはらわた ライジングの幽斎のレビュー・感想・評価

4.0
恒例のシリーズ時系列
1981年 4.0 The Evil Dead 日本にスプラッターを根付かせた傑作
1987年 4.2 Evil Dead II: Dead by Dawn 続編では無くリメイクに近い
1993年 3.8 Army of Darkness 紛らわしいが正当な第三弾
2013年 3.6 Evil Dead オリジナルのリメイク
2015年~2018年 4.0 Ash vs Evil Dead R18+のTVシリーズ
2023年 4.0 Evil Dead Rise 本作、心機一転の新装開店
2025年? とりあえず続編制作決定!

ファン渇望の新作が爆誕!。北米興行成績初登場2位「R18+」18歳未満の入場を禁止する区分として異例の大ヒットを記録。6500ℓの血糊を使った本気のヴァイオレンスが炸裂。観客を再び恐怖の沼へ叩き落とす。AmazonPrimeで鑑賞。

暫く問わず語りにお付き合い願いたいが、定期的に京都在洛の洋画ファンと舌鼓を打ちながら座談会を開く機会が有り、各ジャンルの強者が参戦。私はミステリー、スリラー担当ですが、今回はホラー担当アラサー後半独身男性の駄弁りが止まらず大盛り上がり。彼はレビュー済「SMILE/スマイル」が劇場公開され無い事に強く憤慨、全米№1まで獲得した作品が日本では配信スルーに、非常に危機感を憶えると。このままだと映画からホラーと言う文化まで衰退すると熱弁を振るうが、私も由々しき問題だと思う。本作「死霊のはらわた ライジング」もR18+採算度外視にも関わらず興行成績初登場2位と大健闘も日本は配信スルー。因みにレビュー済「スクリーム6」も然り。今のハリウッドは二極化が顕著で「トップガン マーヴェリック」「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」「バービー」メガヒットか、「シャザム!神々の怒り」「ザ・フラッシュ」一位だけど大爆死と両極端。私のジャンルで言えばレビュー済「LAMB/ラム」ミニシアターでも1億円以上売り上げた作品も有る。パンフレットを作らない作品も増えたとか、鱧料理で夜は深けて行くので有った(笑)。https://www.kyoto-manjiro.com/

本名Samuel M. Raimi、略してSam Raimi監督 63歳。シリーズの顔で監督とは中学からの親友で自主映画を撮った仲Bruce Campbell 65歳は、有る問題を討議していた。
Raimi「なぁCampbell 、ハロウィンってアレでホラーを名乗るかね?」
Campbell「キャンディマンなんかモダン・スリラーとかほざいて実に嘆かわしい」
Raimi「何で最近のホラーはスクリームみたいなシャレオツなんだ」
Campbell「ブラムハウスが配信まで考えてスプラッターなんて下品だと」
Raimi「はあ?、ホラーなんて観客の期待に応えてナンボだろうが」
Campbell「まあ、ソノ通りなんだけど要は企画が通れば良いんじゃない?」
Raimi「いや、実は既に5つのプランを作ってあるんだよ」
Warner Bros.「うーん」(笑)
①リメイクの続編。②スーパーマーケットの続編。③TVシリーズの第4弾。④オリジナルの続編。⑤全く新しい作品。観客がドレが見たいかリサーチを重ねた結果、本作のプランが生き残りWarner Bros.に直談判。ディズニーに並々ならぬ対抗意識を燃やすWarnerは傘下のNew Line Cinema、オリジナルを制作した会社と協議、「死霊のはらわた」公開40周年記念の良い節目だとR18+?、上等じゃないか、本気のホラー映画を魅せてやれ!、太鼓判を押し本作の企画が正式決定。

リメイク版Fede Alvarez監督も、独自に死霊のはらわたの企画を模索したが、Raimiと一緒に手掛けた「ドント・ブリーズ」予想外の大ヒットで企画は立ち消え、Campbellも俳優として「ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス」出演と並行して参加。計画は2013年に始動したので、長きに渡り迷い道クネクネ。ライバル「スクリーム」「ハロウィン」快調な滑り出しを横目で見乍ら、じっくりプランを練り上げる。Raimiが運営するGhost House Picturesが経営不振で出血を止める意味でも重要。2人は監督にレビュー済「ホール・イン・ザ・グラウンド」Lee Cronin監督を抜擢。私は此のニュースを聞いた時から成功を確信したが、Raimiの感性もまだ廃れて無い事を嬉しく思う。雰囲気創りが上手い監督が本気のホラーに挑めば、傑作が出来る事に疑う余地は無い。

結果発表!、製作費1800万$、興行収入1億4700万$、更にWarner傘下HBO Maxでストリーミングで大儲け。カルト映画「死霊のはらわた」ですが、良く見る映画のジャンルは何ですか?、と聞かれた時「ホラー」と答えるには未だ躊躇した時代に登場。私はホラーの専門家ではないが、スプラッターでマニアックなホラーに「オカルト」で薄めて映画を余り見ない層にもフレンドリーに観て貰える事を目指したのが成功の秘訣。死者の書と言うプロットはスリラー派の私も納得のアイデア。

先輩格「悪魔のいけにえ」の様に類似品は多いが、本作は他作品とダイレクトに接続しない新装開店。アメリカは狂喜乱舞で「Serious Response!」最大限の賛辞で映画館を大いに潤わせた。R18+の作品が希少価値で見られる今の時代、長年見続けたファンが共感する「レガシー」を見事に受け継ぎ、更にリブート的な本作は一見さんにも優しい。最近のホラーの傾向で有る社会性も上手く取り入れ、単なるReformのマイナスからゼロに戻すのではなく、Renovation、新たな付加価値をプラスする。一例を挙げるとキャストの中にトランスジェンダーを入れる等、制作に時間を費やした分、旧作とのバランスが上手い点も見逃せず、監督の手腕は称賛に値する。

【ネタバレ】物語の核心に触れる考察へ移ります。自己責任でご覧下さい【閲覧注意!】

「死者の書」も健在で骨格はオリジナルを堅持するが、設定をホラーの定番「夜」からオープニングを「真昼間」に変更。此れはカルト的フェスティヴァル・スリラーの傑作でレビュー済「ミッドサマー」の引用で「Deadites」も復活。マニアなら憶えて当然だが、オリジナルで登場した生物の魂を食べて体に憑依、アンデッドな寄生悪魔。そして「スクリーム」の様な悪ノリ的なオープニング等、他作品の良い所取りを遠慮なく取り入れ、タイトルが登場した「アレ」で早くもアメリカの劇場ではやんやの喝采を浴びた。

監督はRaimiが得意とするテクスチャーを私が解るだけで2つ取り入れた、一つは「エレベータ」密室で移動するホラーに最適なアイテム。秀逸なのは残忍で下品なヴィジュアルは回避、絵的にも納得感ある構成力が顕著で、監督のセンスも存分に発揮。「しっかりホラーなんだけど美しい」をコンセプトに、2つ目のディザスター、Raimiが地震とか地割れが好きなのは過去作品でも明らか「スペル」とかね。「ハロウィン」の様な生活感の有る空間に非現実をフューチャー、異世界を意識させ絶望感も味わう。

6500ℓの血糊は偽りなく登場するが、ソレもモダン・スリラーの元祖「シャイニング」へのオマージュ。扉が開いて血が溢れ出すのは、ホラー映画では禁忌「出産」もイメージさせる。「ハロウィン」と同じ様に核と為るのは「家族」で在り、何処の馬の骨か分らない若者が犠牲に為るのではなく、恐怖に対する人間の覚悟も感じる。秀逸なのはジャンプスケアではなく、感情に訴える温故知新的な演出で家族が崩壊する流れは、分かり易いけど良く出来てる。レコードから聞こえる声が「アレ」ですから、絶対に字幕で(笑)。

オチは恒例の「悪魔のいけにえ」オマージュのチェーンソーで華麗にフィニッシュ!。此処でも「スクリーム」的な伏線回収も有り、今回も山あり谷あり湖あり(笑)隅すら隅まで万遍なく楽しめるホラーに。Campbellは想定外の大ヒットを受けて「2年事に物語を創りたい」と語るが、此の人もRaimiもハリウッドで悠々自適な生活を送れる人達なので、全くアテに為らない。寧ろ現在のシリーズを束ねるのは兄のIvan Raimiなので、Warnerからのプッシュも期待したい。

見易い、分かり易い、テンポ良し、休憩なし(笑)。アホなシーンを真面目にやるのも大切。
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