greatmuca

シェイン 世界が愛する厄介者のうたのgreatmucaのレビュー・感想・評価

3.7
かの「ロックは死んだ」後のポピュラーミュージックの新しい在り方としてワールドミュージックと呼ばれる土着音楽に注目が集まりアイルランド音楽もその中のひとつでした。R&B、R&Rの原型がアメリカ民謡であるのならばアメリカ民謡の原型は移民たち彼らそれぞれの母国の民謡なのではないだろうか。移民にはアイルランド民もいただろうからアイルランド音楽の現在のポピュラーミュージックへの貢献は大きいものだと思います。難しいのは、あまりにも土着過ぎればポピュラーにはなりえず、ポピュラーであればあるほどワザとらしいとされる。植民地主義だの金もうけだの言われるわけですが、ポーグスが凄かったのは土着過ぎることもなくワザとらしくもなく、ひたすらに誠実だったことだったと思う。シェインの破天荒さばかりクローズアップされていますが実に誠実な人だと私は思うのです。

わたしはアイルランドっぽい音楽を聴くと、楽しくて高揚しますが何だか物悲しく切ない気持ちになります。でも人の感情を動かすものとして正しいと思う。

作品はシェインの人生の話なのだけど、それほど感情の深いところには食い込んでいないので、シェインが内でどんなことを考えていたのかまではわからなかった。酒やドラッグに向かわざるを得ないものがあると思っていたのだけど。あと、死にそうな人ほど死なないのはロック界あるあるです。

在りし日のジョー・ストラマーも出ています。シェインの具合が悪かった頃、ジョーがサポートしていたことがありました。ポーグス版のロンドン・コーリングがかっこいいったらない。アイルランド音楽とロックの相性の良さを思い知ります。
greatmuca

greatmuca