木蘭

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3.7
 自身の体験を記したエマニュエル・ベルンエイムの原作をフランソワ・オゾンが忠実に映画化した作品。

 日本版のタイトルや予告編は意図的にミスリードを誘う様な作りになっているので、素直に信じて観るとガッカリすると思う。
 予告編は笑いあり涙ありの分かりやすいエモーショナルな物語の様だが全然そんな事は無い。
 タイトルも原題は劇中最後の台詞から取られており、時制が違う。

 地味と言えば地味な話だが、悲劇の中に幸福を見る様なひんやりとした作風の中に、苦笑してしまう様な皮肉やユーモアを交えて、分かちがたい愛情を込めた作品になっている。

 原作が主人公エマニュエルの実体験に基づく実話なので、淡々と描かれる展開に理解出来ない部分や感動しづらい部分もあるのだが、同じ様な体験や共感できる部分がある人には物凄く刺さる・・・そういう作品。
 オゾン監督も最初のオファーから20年近くたってから制作する気になった様に、自分ももっと年を重ねたら、もっと感じる部分もあるだろうな・・・点数が低めなのは、未だ自分には理解出来ない事が沢山あったから・・・そういう作品。

 とにかく俳優達の演技が、派手な事は何もしていないのに素晴らしくて。
 特に出番は少ないのにシャーロット・ランプリングの老いた演技や存在感が凄くて、一瞬だけ笑うシーンの人生の幸せと不幸を詰め込んだ様な表情に、もうね・・・凄いなぁ・・・と思いました。
木蘭

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