ぐり

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2.6
安楽死を選択した当人ではなく、その周囲に焦点をあてた物語。

当人が安楽死を決断する心情には、深くフューチャーせず、協力を求められた娘たちや親族、パートナーたちの反応が描かれていた。

生きることと延命は別物だと、安楽死を望む父親。
その父親の気持ちに納得したわけでもなく、ただ父親の決断を受け入れて協力する姉妹。
納得できず、自身の価値観で説き伏せようとする親族。
反発し、安楽死を妨害しようとするパートナー。

どこまでいっても平行線。

人を殺めてはいけない。
自殺幇助禁止もその延長にある。
集団のなかで生活するみんなのためにあるルール。
そのみんなのためのルールが、個の権利を脅かす。

後半で、救急車のドライバーが宗教観から降りると言い出す。
その相方が、「なぜ死のうと思うのか、人生は素晴らしいのに」というようなことを言ったときの、父親の顔が全てだった。

人生は素晴らしいかどうかは、その条件次第なんだ。
どこまでいっても、主観なんだ。

死ぬことを決断した父親が、いろいろな人に会いたがり、話したがり、孫の発表会に行きたがる。
安楽死にかかる費用を聞いて、父親が「貧しい人は、どうやって死ぬんだ」とも言っていた。


安楽死にまつわる様々を、リアルに描いているように思った。
多くの人に見て欲しい。
ぐり

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