このレビューはネタバレを含みます
もし自分の親に「もう終わりにしてくれ」と言われたらどう感じるのだろうか。
尊厳死を望む父親とそれに奔走する娘たちの物語。
映画序盤から画面いっぱいに青が強調されていた。
その特徴的な青の使い方は『ファーザー』(2020)を想起させる。
序盤では父親の周りには青がまみれていたが、容態が回復していくうちに、生きる希望を見つけていくうちに青は少なくなっていく。
父親にとっての"生きる希望"が"尊厳死を遂げること"というのが何ていじわるなのか…
「生きることと延命は違う」という父のセリフが胸に重くのしかかる。
もし自分が体の自由が効かなくなった親に同じことを言われたらエマニュエルと同じ選択をするだろう…。
尊厳死が近づくにつれ上機嫌になる父親とは相反して、彼の周りの人間、特に娘たちにはその現実が重くのしかかる姿がとても印象的であった。
父との別れがわかった上での最後の晩餐。
いくら覚悟を決めたと思い込んでもやはり受け入れられない。
青い服装ばかりしていたエマニュエルはこの日は一転して鮮やかな赤を身に纏い最後の晩餐へ。
「今日は美しい、お前は赤が似合う」
そんなことを言われた日にはどう感情の整理をしろというのだ…。
終わり方は割とあっさり。
すべて順調に終わった、
残されたものたちはなにを思うのだろうか。
「あなたのような娘がいてよかった」と言った相部屋の男性
「貧しい人はどう死ぬのか」、
など、要所要所で印象に残るセリフやシーンが多かった。
昨年自殺幇助で幕を下ろしたゴダールが重なる。