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英雄の証明のはぐれのレビュー・感想・評価

英雄の証明(2021年製作の映画)
4.1
「本当の美談は恥ずかしがって顔を出さない」

そんな格言が鑑賞中にずっと頭をよぎっていた。巨匠アスガー・ファルハディの最新作。

主人公の「普通のこと」をことさら大きく取り上げて、彼を祭り上げて利用する人々。そしてそれを一時の娯楽として消費していく顔の見えないSNSの民衆。
どんな英雄だって人間なんだからひと皮剥けばボロボロとほころびが出てくるもの。しかしそんな当たり前のことを許してくれないのが現代のネット社会。そしてそんな危うすぎる人間関係の脆さをこれでもかとあぶり出してくるファルハディ。

主人公が世間から称賛されればされるほどその後にその反動としてどん底に蹴落とされるってわかっているから見ていて辛かった…。だってあの底意地悪いファルハディだよ。そのままご都合主義的なハリウッドエンディングを迎えられるわけないやん😢笑

刑務所仲間から「上手くだませたな」ってボソッと投げかけられるシーンの怖さ。そうなのよ、人間って他人の幸せが面白くないものなのよ。特に自分より下だと思っていた奴が成り上がった時にね。
慈善団体から表彰される場面で債権者を悪者に仕立て上げてしまうシーンもハラハラしながら見ていた。これこそ公開処刑だしこれこそ集団リンチだよね。本当に身につまされるほどリアリティのあるどんなホラー映画よりも恐ろしい物語を創り上げるよファルハディは…🤦

話は変わるけど同情しちゃうし応援したくはなるんだけど最終的に暴力でしか物事を解決出来ない主人公の姿が先日のオスカーでのウィルの姿と重なってなんか悲しかった。
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