寝木裕和

英雄の証明の寝木裕和のレビュー・感想・評価

英雄の証明(2021年製作の映画)
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現代だからこそ、ソーシャルネットワークがあるからこそ… という問題だけでは言い切れないテーマを持った作品。
つまりこれは、いつの時代でも、どこの国でも起こりうる普遍的な人間の業についての話しだ。

人は簡単に忘れてしまう。
すべての人が、「間違う」という可能性を持っているということを。
そして間違いを犯してしまった人間を、集団という絶対的な力を使って、徹底的に無慈悲に人格否定する。

否定された主人公ラヒムはどんな行動に出るのか。
彼はもがく、もがく… 不器用に、愚直に、もがく。

悲壮的な結末ではあるのだが、それでもそこに暖かく寄り添ってくれる人々の存在に、微かな希望が持てるのだ。

そして、こういった人間の狂気性の餌食になることの恐ろしさもこの作品を見終わったあと心の中にずっと残っているのもまた事実。

集合体として生きる人間の複雑さと残酷性を、観る者に投げかける力作。
寝木裕和

寝木裕和