みかんぼうや

英雄の証明のみかんぼうやのレビュー・感想・評価

英雄の証明(2021年製作の映画)
3.3
同監督の「別離」が面白く、本作もカンヌのグランプリ作品ということでかなり期待していたのですが・・・どうも掴みどころにかけるというか、なんとなく“見どころ”を真正面から楽しめなかった作品でした。

「0から1の嘘を作るのはダメだけど、1から2に盛るのはまあアリ」みたいな話を時々聞きますが、この映画を観ると、「1から1.5」でもやっぱり嘘は嘘。悪気があってついた大きな嘘でなくても、ちょっとした都合合わせの嘘の積み重ねが、積もり積もって大きなしっぺ返しとなる。特に、すぐに“情報の短編が切り取られる”このSNS時代では。そんなことを感じました。

上記のような人間間の微妙な認識のズレが大事になっていく、という流れは「別離」にも通ずるところがあり、テーマ的には好きなはずですが、全体的にいまいち盛り上がりにかける思ったより地味な展開なのと、主人公の言動がフワフワしていて(だからこそ大事になるわけですが)、おまけに段々感情的になるなど、同情や共感もできず、観ていて悶々とした感覚になってしまったのがあまりハマれなかった要因でしょうか。

もう一つのテーマになっていたソーシャルメディアの影響、というのも、この手の題材はここ最近でかなり増えていて見慣れていることもあり、他作と比べて、そこまで目立つようなものでもなく・・・

決してつまらない作品ではないですが、なんとなく自分の中でもっとダイナミックな話を期待していた分、期待値コントロールがうまくできていなかったのかもしれません。
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