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レッド・ロケットのBOBのレビュー・感想・評価

レッド・ロケット(2021年製作の映画)
4.0
ショーン・ベイカー監督の最新作。

2016年。落ちぶれたかつてのスターポルノ俳優が故郷テキサスに舞い戻る。

"Homeless. Suitcase. Pimp"🍩🍓

一般的に高く評価されている『フロリダ・プロジェクト』がもうひとつピンとこなかったショーン・ベイカー監督作品だが、本作はとても面白かった。暫定断トツベスト。

テキサスの工場地帯を舞台に、社会の片隅に生きる人々の暮らしぶりを描いたネオ・リアリズム的な社会派群像劇として興味深い上に、元ポルノスターのダメダメおじさんがドーナツ屋で働くエロカワティーンガールにメロメロになるコメディとしても楽しめた。

ポルノ業界への返り咲きを狙うマイキーと、退屈な田舎町から脱出したいストロベリーによるちょっぴりヘンテコなロマコメ。『パンチドランク・ラブ』や『リコリス・ピザ』のテイストに近い気がした。マイキーがストロベリーをポルノ女優に勧誘するという危うさや胡散臭さは常にあるし、二人の将来なんてたかがしれているだろうと思ってはしまうものの、何だかんだで気の合う2人を応援してしまっていた。一番のハイライトは、ストロベリーが事後裸のまま"Bye bye bye"♪を弾き語るシーン🎹。ストロベリーが目の前で非凡な歌の才能を披露しているのに、彼女のことを将来の人気ポルノ女優としか見ていないマイキーが憐れだし悲しい。

主役のマイキーのキャラクターが実に面白い。自己中心的でご都合主義的で迷惑なヤツではあるのだが、決して悪いヤツではないので憎めない。次は何をやらかすのだろうかと彼の一挙手一投足から目が離せなかったし、彼のカムバックストーリーを期待してしまっていた。現状に甘んじて何もせず、金蔓にたかるしか芸のない周囲の人々より、やり方はさて置き、現状打破しようと金を稼ぐマイキーに肩入れしてしまったのは事実。

本能のままに突っ走る天然おバカキャラとしてはかなり優秀。救いようのないクソ野郎ぶりを発揮する"Thanks God"ダンスや、論理破綻している突発的な告白シーン🌹、立派なイチモツをぶらぶら揺らす全裸疾走シーンなど、何度も笑わされた。

ショーン・ベイカー監督に映画館でスカウトされたというヒロイン、スザンナ・サンが輝いている。エロさとキュートさを兼ね備えた子悪魔ぶりでマイキーと観客を虜にする。"Bye bye bye"♪の弾き語り🎹シーンは、作品内で一番感情に訴えてくるシーンだった。

主役のマイキーだけでなく、他の登場キャラクターも個性派揃い。ドラッグ中毒で息子を取り上げられている妻とその母親、軍歴詐称詐欺をする隣人、ドラッグディラーのガテン系姉さん、見掛けによらずマザコンの大男。本当に実在しそうな"ろくでなし"ばかりである。表面的な言動は笑えるのに、彼らのキャラ背景を考えると全然笑えなくなる。この塩梅が巧い。

『タンジェント』『フロリダ・プロジェクト』同様、ショーン・ベイカー監督はカラフルな色遣いと、美しい風景が特徴。工場のある風景(特に工場夜景やマジックアワーの空)、ビビッドな色の建物。ドーナツショップは、監督のトレードマークなのか?

アメリカのネオリアリスト、ショーン・ベイカー監督。工場地帯。製油所。貨物列車。緊急警報。🚲。キャバレー。昔ながらのショッピングモール。近所の庭でドラッグ売買が日常茶飯事。ドラッグ中毒、育児放棄。

2016年が舞台ということで、主人公たちが"Make America Great Again"を掲げるトランプの選挙キャンペーン映像をテレビで眺めるシーンが何度も登場する。本作で描かれているような"プアホワイト"達がトランプを熱烈に支持していることは容易に想像できる🇺🇸🚬🪖。

全くエロくない生々しいセックス描写の数々。海辺でヤッてる所をアップで撮ってぎゅいーんと高速ズームアウトするショットは、素晴らしいセンスで、思わず笑ってしまった。

『Fast&Furious』のパロディ映画『Fast & Fury Ass』。実在しそ〜笑

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