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3つの鍵のチネマエッセのレビュー・感想・評価

3つの鍵(2021年製作の映画)
2.9
同じ3階建てのコンドミニアムで繰り広げられる群像劇。3組の家族にそれぞれの悲劇が襲う。
そして3つの時代の家族の変遷を描き、人間は時間とともに変わっていくということを改めて考えさせてくれる物語。
彼の作品の中で原作があるものは珍しい。

彼独特の皮肉たっぷりの、もしくはユーモアたっぷりの爆笑ナンニモレッティ を望んでいる人には、まずこの映画はおすすめしません。
かつてのイタリア映画界の救世主的であった、多くのシネフィル若者が崇拝したあの頃の面影は、近年の彼の作品にはもうどこにも感じられません。

彼の作品群の後半は、主に親と子の関係性を描写することに重きを置いていて、(今回の作品も実の息子の「アンドレア」という名前を、物語の主人公の子供の役名に使っている)ジャーナリズム的な要素やあの毒の効いた私小説のようなものがもう描かれないことはわかっているのに、(ガンも経験したし、自身の母親の死も経験しているし、そういう変化は仕方がないと思う・・・)どこかで期待してしまって、今回もそれで勝手に残念な気持ちになりました・・

ちなみに本作で、アフリカ系移民の人たちが働く施設が出てくるのですが、その施設は実は経営不振で潰れた映画館跡なんです。そこに反移民デモの集団が襲撃し火を付ける。

モレッティ自身も映画館をローマで経営しているので、こういう描写を通じた訴えかけは昔の彼らしさを感じさせてくれるところではあります。
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