故ラチェットスタンク

ニトラム/NITRAMの故ラチェットスタンクのレビュー・感想・評価

ニトラム/NITRAM(2021年製作の映画)
4.4
ほぼ完璧な映画。
食卓での母との鏡についての会話とラストの鏡へのキスが決定的だ。自分の性質に逆らえない。
非常に面白いのは性悪的なニトラムと性善的なヘレンが対称的でありながらどちらもナイーブであり、社会から隔絶された空間に生きている点だろう。車屋にいる場面で従業員との会話によりヘレンが相対化されることでよくわかる。
撮影による「社会から断絶された人間」描写の的確さは当然のこと、心情と場の空気を極めて的確に捉える音使いが絶品。

波に足を取られる感覚がよく分かる。渚でもつれた身体はやけに重いものだ。