波乗りサンバ

ニトラム/NITRAMの波乗りサンバのレビュー・感想・評価

ニトラム/NITRAM(2021年製作の映画)
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人が人を理解しようとするのは難しい。それが特に他人ともなると。
自分に害を与えるかもしれない、善悪が曖昧な存在は人に恐怖を抱かせてしまう。
子供のように無邪気で、悪ふざけがどのような結果を引き起こすのかが判らない。人との繋がりがそのせいで断たれてしまったひとは、よく理解できないままに苦しくなっていく。
『ポート・アーサー事件』をリアルタイムで知っている人はあまりにも凄惨な出来事だったので、この映画をすごく複雑な気持ちで観たんじゃないだろうか。
事件を知らなくても、自分にも跳ね返ってくるような内容だった。

「いずれはお前のものになる」と言った父親の切実さよ。いずれ自分たちがいなくなったあとのことを心配してのことだったんだろうな。
母親の言動は酷かったけどそれでも見放さないという気持ちがあったのがよく分かるし、調べたら父親はイネーブラーだったので、母親に全てのしつけが重くのしかかっていたのだと思う。

俳優陣が素晴らしくて、ほんの少しの感情が漏れ出る表情などで胸が締め付けられた。
事故が起きたときも、母親はどういう状況だったのか想像がついていたのではないかな。
大切なのに信用も信頼もできないっていうのは本当にきつい。
それなのに時代のせいか、付き合う彼女ができていずれは結婚するのだと当たり前のように言う。(もしくは祈りのようなものだったのかも)
エンドロールの海辺の音が印象的だった。

全世界で銃規制が厳しくされたら良いのにと思う。