Kentaro

ニトラム/NITRAMのKentaroのネタバレレビュー・内容・結末

ニトラム/NITRAM(2021年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

社会一般から劣後してるという感覚は自尊心を削り、生活の一瞬一瞬に不穏な薄暗さをもたらす。その薄暗さから解放されたくて普通になろう幸せになろうともがくほど社会が自分から遠ざかっていく。

二トラムが父親の死に直面し、母親に「皆絶望的な気持ちで毎日過ごしてるんだ、パパはなぜ...命を絶つなら僕のはずだった」と語る。この感覚を言語化できるレベルの知能の持ち主であり、きちんと傷つくことができることが観ていて余計に辛かった。何も感じないサイコパスの方がまだ救われる。一見衝動に身を任せてやりたい放題やってるように見える行動は、輪に入ろうともがいていることもそれが自分にはどうにもならないことも自覚して、なお社会にアプローチし続けていたSOSだと思うと苦しくなる。

どうにか関係を築こうと地道に努力したものの、自分の行動によっては何も影響を与えることのできなかった社会に、彼は銃によって強引に参加しようとしたように見える。その行為はもちろん許されないが、それまで彼が受けてきた夥しい数の社会の無関心と疎外は糾弾されない。
Kentaro

Kentaro