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MEMORIA メモリアのmmntmrのレビュー・感想・評価

MEMORIA メモリア(2021年製作の映画)
4.6
正直お手上げ。他にも不可解な作品は幾つも経験したけれど、本作ほどのねじくれた不可解さには出会ったことがない。

『MEMORIA』を理解する為に必要な概念が自分に欠けているという気がしてならない。

それさえ掴めれば、きっとこの作品は難解でも何でもなくなるんじゃないだろうか。その時残るのは、自らが脱皮する為に苦しみもがいた記憶と、アピチャッポンの創造性に接近させられた呪いのような詩の連関だろう。


一度の鑑賞では到底捉えきれない程のモチーフが滝のように僕を襲っていた。視覚と聴覚を完全に支配され、終盤のとあるシーンでは遂に脳がオーバーヒートする感覚があった。

環境音は脳内で記憶された映像を強制的に呼び覚ます。とても負荷のかかる情報だと実感した。

本作を構成する要素はあまりにも広範的で、直感して筋を通せるものではない。それぞれのモチーフが断片的に存在を主張しており、今思い返すとまるで惑星のようだと思った。

作品『MEMORIA』をひとつの宇宙とするならば、そのうちに独立して存在しているかのような幾つものモチーフは、それぞれに影響を与えあっている惑星だと言える。

何を言っているのか自分でもよくわからない。

とにかく、僕が混乱しているのは、暗喩的で詩的な台詞と現象の数々が、映画の中心であってもおかしくない程の重力を有していることがひとつの原因だ。

アピチャッポン監督は何が言いたい!と息を荒げて訴えたい。しかし、そういう事ではないのだろう。『MEMORIA』は我々に理解を促しているのではなく、思考を促す。そして大袈裟に言えば、発想力の昇華を促されているのではないかとさえ思える。

本作が満足な評価を得るのはきっと相当な時間を経た時だろう。

観る度に評価を高める作品のひとつだと思った。

初めて国外で撮った作品とのことだが、アピチャッポン的なショットの“間”は健在だった。ただ、都会でのショットと霊的な感性の相性が難しかったのか、僕には少し窮屈なショットに映った。だからショットの美しさは微妙だったと言わざるを得ない。彼が森で撮っている時の色使いに息を呑んだのだが、その経験と比較してしまった。

もう一度観たいと思うけれど、その点では少し億劫ではある。
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