木蘭

MEMORIA メモリアの木蘭のレビュー・感想・評価

MEMORIA メモリア(2021年製作の映画)
2.7
 ヒロインの頭の中で鳴り響く不思議な音が導く驚愕の真実・・・みたいな謳い文句に乗せられたら、他人の夢を延々と見せられる様なアート映画だった。

 不思議な音が通底音の様に流れて物語を支配するのかな?と思ったら、初っぱなから意表を突かれて度肝を抜かれ、作品の展開も想像の斜め上を飛んでいった・・・。

 ゆったりと時間の流れる展開は間が多く、カットは通常の二倍から三倍の長さで、時にはキャラクターが画面から消えてもしばしカメラは切り替わらない。
 時折差し挟まれる会話劇はとりとめも無い遣り取りだったり、哲学的だったり、一見すると特に連続性も無い。そして時折生じるヒロインの認識とかみ合わない会話や展開に、観客も困惑する。

 劇映画を観ていると言うよりは、ヒロインの迷い込んだ世界を、ソクーロフやロズニツァあたりの撮った「観察系」ドキュメンタリー・・・定点カメラである状況を長回しで切り取った情景を眺め、効果音やBGMは極力廃して、意図的に再構築した風の音やせせらぎ、人のざわめきといった音を聴きながら、その状況を疑似体感しながら観察する・・・手法で眺めている、そんな映画。

 つまりは寝落ち一直線・・・
なのだが、画面に映し出される美の力がある為、飽きる事はない。集中力は要求されるが。
 それと音のメリハリがあるというか、一つ一つの音をキチンと分離させた上で音の粒が立っている為、劇場などの音響の良い環境で鑑賞すると、物凄く疲れる。

 とにかく、圧のあるアートとに向き合った・・・という感じ(翌日寝込んだ)。
 だからこそ、不揃いなイメージの連続にオチを付ける様なラストは、一寸ガッカリ・・・かな。
木蘭

木蘭