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MEMORIA メモリアのkuuのレビュー・感想・評価

MEMORIA メモリア(2021年製作の映画)
3.8
『MEMORIA メモリア』
原題 Memoria.
映倫区分 G.
製作年 2021年。上映時間 136分。
タイのアピチャッポン・ウィーラセタクンが『サスペリア』のティルダ・スウィントンを主演に迎え、南米コロンビアを舞台に撮りあげたコロンビア・タイ・イギリス・メキシコ・フランス・ドイツ・カタール合作ドラマ。
共演にジャンヌ・バリバール。

今作品は、1週間だけ都市を回るという公開戦略をとり、各都市を通過した後は、二度と上映されない。 
ブルーレイでも、ストリーミングもされないと謳ってた。
良くわからないながらアマプラにあり視聴。

今作品は魅力的で、刺激的でしたが、内容を理解するのが難しい作品でした。
また、展開もアンダンテのテンポで、無音のテイクがやたらと長いのは否めないし、そないな展開が苦手な人には向いてないかもしれませんし、SFチックなラストも意見が分かれるかもしれない。
個人的には、今でもどう考えているのかよくわからないし、結局、理解できてません。
しかし、なんちゅう独創性と大胆さ、そして、説得力のある禅の謙虚さをもって呼び起こされる最大のアイデアを持つ作品なんやと感心はしてます。
今作品は未解決で語られることのない存在の謎に思考を戻すことを要求するアートと定義したら云いかな。
我々は、生れ生れ生れて生の始めに暗く
死に死に死んで死の終りに冥し。
その理由もわからず、しばしば考えたくもなく、知りたくもない時もある。
しかし、アピチャッポン・ウィーラセタクン監督はこれらの現象に、農業や工学の問題のように冷静に取り組んでいました。
今作品はウィーラセタクンが初めてタイ国外で作り、タイ人以外のキャストを起用した映画であるそうだ。

舞台はコロンビアで、ティルダ・スウィントンが演じるのは、メデジンで花を売るマーケット・ガーデン・ビジネスを営む駐在英国人女性ジェシカ・ホランド。
彼女は妹カレンとその夫のフアン・オスピナを訪ねてボゴタに来ている。
カレンが謎の呼吸困難で病院に入院しているからだ。 
ある夜、ジェシカは奇妙な音やソニックブームで眠りから覚める。
何が起こっているのだろう?
そして、この音はジェシカにしか聞こえないらしい。
カレンとフアンと共にレストランに食事に出かけた彼女は、再び銃声のようなはっきりとした音を聞くが、誰もそれに気づいていないことに気づく。。。

その音は、世界の深遠な変化の予兆か徴候のように感じるが、彼女はその音に気づいている唯一の人間として選ばれた。
この音は、街で掘り起こされた古代の骨と関係があるんか、それとも、ジェシカは精神崩壊に陥っているんやろか。
彼女は友人の教え子のレコーディングスタジオを訪ねる。
エルナンにノイズをデジタルで再現できないかと尋ねると、彼はそれを実現し、製作中のモンを聴かせる。
二人は恋愛関係に発展しそうな勢いやったが、スタジオに到着した彼女は、困惑したエンジニアたちから『そないな名前の人は働いていない』と云われる。
しかしその後、彼女はエルナンという年老いた男に出会う。
彼は、ホルヘ・ルイス・ボルヘス『伝奇集』に収められた短篇小説に登場する『記憶の人フネス』のように、自分に起きたことをすべて記憶しており、圧倒される危険を冒せないので村を出たことがないと云う。
この年老いたエルナンと話しているうちに、彼女の意識の中に、懐かしい電波に同調するように、取り戻した記憶が立ち上ってくる。
しかし、それは彼女の記憶なんやろうか。。。

今作品の主人公ジェシカ・ホランドを演じるティルダ・スウィントンの演技はそらもう巧みでした。
彼女の演技で良かったのは、特に音に対する反応。
音を聞くたびに、一度目は、手に力が入り、飛び跳ねるってほどでもないけど、恐怖と混乱と困惑のリアクションは巧み。
また、音を表現するのは大変なこと。
それに、外観のことも加わるとさらに難しくなる。
映画全体を通してのその音の使い方はとても佳くて、ある種の評価に値すると思います。
今作品は、一歩一歩積み重ねていかなければならない体外離脱のような体験ができる。
ロマンチックな心理ドラマ映画『トロピカル・マラディ』や『ブンミおじさんの森』など、謎めいたリアリズム・ミステリーの傑作を持つこの監督を敬愛する人なら、期待する場所はご存知だとは思います。
個人的には心の中に残滓が残る作品でした。
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