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パリ13区のNnのレビュー・感想・評価

パリ13区(2021年製作の映画)
3.6
いい。きっと横を見れば私のすぐ隣にある話だった。
だからといって「…これは私の話だ……!!」と共感し、感情移入して感動するって話でもないのが、なんだか他にない温度感。

設定とかはかなり自分に重なるんだけど
全然登場人物と私は性格が違って。
だから、友達と飲みに行ってその子の口から聞く、最近こんなことがあって、みたいな話で。
あーわかるなー、とか、んーそれはわからん、とか思いながら相槌を打って、
でもなんか今大事なこと言った気がするな?とか心に引っかかったりもして。

側から見れば淡々とした日常なんたけど、
確かにそこに本人にしか分からない感情の波があるのが分かる。
SNSでシェアされて、リツイートされて、いいねされて、共感されてっていうのが当たり前の世界の中で、
言いたいことはわかるけどなんか共感はできないって塩梅のものを作り出す
勇気っていうか、そのちょうどいい加減を攻めるセンスっていうか、
そういうのを感じるわな。
私たちの日常を、あの子の日常を、友達の日常を、ぜーんぶ足して割ったらこんな映画になりそう。
キラキラしてる、恋人とうまくいってる、そういう生活ばっかりを君らは切り取ってるけど
案外平均値はこれなんだよきっとね。
寂しいと口に出すほど孤独じゃないけど、
今の人生に満足だ、幸せだなんて到底思わないし、
でもなんかこんな人生でもいいかって思えるんだけど
妥協だと言われるとムッとする。
そう、私たちがZ世代です、という感じ。

作品観てからサントラ聴くと
もうね、毎日これ聴いて出勤か退勤しますよ、という気持ちになる。 
「まるで映画の主人公みたいな」という比喩を使うことあると思うけど
この映画が生まれてしまった限り、私たちはみんな映画の主人公になれるんだよ、すごくない?
Nn

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