モノクロの画像で映し出すパリのアラサー男女の群像劇。
米国の作家エイドリアン・トミネのコミックを下敷きにした"ひねたストーリー"ながら、映像も音楽もお洒落に描き出されたアラサー男女の甘酸っぱい青春物語なので、なんだか見終わった後に切なくもホッコリしてしまう。
画像の情報量が減るモノクロという映像演出が非常に効果的に使われていて面白かった。
主要登場人物の一人とポルノ女優が見間違われるプロットとか、カラーだったらアソコまで他人のそら似とは思えなかったんじゃないかな。
特に興味深かったのは、映像から色が抜けると(監督はアジアの街を映す様に撮影したらしいが)映し出された都市の属性が消えるという事。そこがパリだという意識が消えてしまうので、街の空気を写し撮るのに色というのが大きな役割を果たしている事に気づかされる。
また肌の色が写らないので、これだけ他人種の登場人物でありながら、人種的属性が希薄になるという事。もちろん顔立ちや体格の違いは歴然とあるとしても。
それと赤裸々なSEXシーンは生々しさが消えて、微笑ましかったり美しかったりと感じ安い。特にSEXシーンは振付師を交えて、綿密なリハーサルを重ねているらしく、ちゃんとエロいしリアルだし、なおかつ美しい。
作品を通じて、生きている肉体が描かれるのだが、色味が抜けると匂い立つ様な体臭的なモノも抜けるのだな・・・と、(祖母の体臭をかぐシーンとかも)これまた感じた。
空気で伝わるモノを表現するのに、色彩が大きな役割を果たしているんだな・・・と改めて感じた1本でした。