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わたしは最悪。の39のネタバレレビュー・内容・結末

わたしは最悪。(2021年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

予告から見ると恋愛上のラブストーリーだと思っていたが、決してそれだけではない物語だった。

ヨアキム・トリアーの作品に共通することといえば、主人公が、きっかけは些細なことでありながら、確固たる理由で人生を選んで歩んでいく点だと思う。たとえそれが一晩の楽観的な出会いだとしても。それを生涯の出会いのように意味あるものとして描いてくれるのが彼の素敵な部分だと思うし、それを後悔することはない、と肯定してくれる。

だからといって人の感情は恋情だけで決められるものではないし、愛情の行く末、感情の置き場所を「きっとここなのかも」と優しく導いてくれる優しさとリスペクトもあって、ユリヤに必ずしも共感できない人にも救いをくれていると私は感じた。

人生は恋愛に傾倒するものではないし、興味がコンスタントに入れ替わるユリヤの魅力を自然に受け入れ、彼女でしか語ることのできない軽やかでいて真摯な感情を、実に見事に映像表現していたと思ったので好感度大!

そして更に素晴らしかったのが、幻覚の中でユリヤが父に向かってタンポンを投げつけるシーン。子供を望まない女性にとって一番の煩わしさとは月に一度訪れる生理の日で、その彼女が生理用品にどれほどの怒りを込めているのか、男性であるヨアキムがここまで解釈できているとは…!!!
ドライブマイカーにもタンポンの描写が出てきたけど、あれは夢を見過ぎだし神秘化しすぎだと私は感じていたので、こちらの表現の仕方を心から賞賛したいのです。

次回作ではいったいどんな物語を見せてくれるのか。ヨアキムが描くものが今から楽しみでたまらない。
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