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わたしは最悪。のmoneのレビュー・感想・評価

わたしは最悪。(2021年製作の映画)
3.7
久しぶりのノルウェー語に加え、港湾エリアの新開発が不人気であることなど、オスロネタに触れられたのは嬉しかった。
また美しいカットが多く、主人公が時の止まった世界から駆け出すシーン、そして最初にパーティー会場で高台からオスロ・フィヨルドを見下ろしていた場面は印象的だ。

とはいえ、観賞直後はリコリスピザで得られた清涼感とは真反対の、どんよりとした気持ちに。
その場では期待していた映画(もう少し爽やかな話だと思っていた)ではなく、所々に見られる北欧映画ならではの生々しさや、そしてナレーションの主張の強さに若干辟易していたからだろうと分析した。
けれども思い返してみると、あのモヤモヤした気持ちはやはり、主人公に共感する点が多くて感情移入し過ぎていことから生まれたのだろう。この映画の主題があまりにも耳が痛くてあてられてしまった。
自分なりのこだわりのある理想主義者。方向転換は容易にできるが中々長続きせず、年齢を重ねると共に自分が何者なのかわからなくなってくる。
そんな状況に対して努めて楽観的に振る舞うけれども自尊心や自信は削られてゆく。
映画が進むに連れて自己投影した主人公と共に苦しくなっていくが、そんな中、主人公が元恋人の病、そして自分自身の妊娠という出来事にしっかり向き合ったことで色々と考えさせられた。

タイプの作品ではなかったが、この先も記憶に残り続ける作品だろうと思う。そのような意味で大切にしたい。
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