mimitakoyaki

わたしは最悪。のmimitakoyakiのレビュー・感想・評価

わたしは最悪。(2021年製作の映画)
3.9
人生の主役になりたいのに、何にもなれない女性の物語です。
医者を目指すほど成績優秀なのに、飽きっぽいのかすぐに他のことに目移りし、何事もすぐに衝動任せに乗り換えてしまうので、現状は書店の店員なのです。
自分なりの理想やプライドはしっかり持っていても、そこに追いつけずに30になってもフラフラしていて、それがなかなかに痛々しいです。

もうなんか、自分の嫌なところ、ダメなところの内面を鏡で見せられて指摘されてるような感覚もあり、リアルに感じます。
周りには仕事で成功してる人、家庭を持ち子育てをしてる人、今の彼はベーカリーカフェの店員で、主人公はそんな人達を見ながら、それじゃない、わたしはそうなりたくない、みたいな事もどこかで思ってたりしています。

人生にはいろんな岐路や選択がありますが、どんな選択も自分のものです。
良い選択もあれば後悔だってあるでしょうが、それも自分で引き受けながら生きていくんだなと思いました。

主人公が年上の漫画家と恋人関係になるのですが、彼の方は子どもを作りたいと望みます。
え、結婚してへんかったやんな?と日本人のわたしはすぐに思ってしまったのですが、フランスやノルウェーなどでは、結婚してないカップルから生まれたいわゆる婚外子の方が結婚した夫婦の子どもよりも割合が多く、婚外子が6割近いと聞いたことがあります。
だからごく当たり前な感じで結婚というワードも出てこないままに、子どもを作るかどうかって話になってて、日本では同性婚どころか選択的夫婦別姓ですら「家庭や社会を壊す」みたいな事を言うてる連中が支配してるので、どんどん進んでく世界から取り残されてるのをあらためて感じました。

自分勝手とも言える主人公ですが、でも右往左往しながらも自分に正直に生きてるし、自分の選択が相手を傷つけたり、愚かに思える事もあったり、痛みや後悔も含めて、人生ってそういうものだと優しく肯定してくれてるように思いました。

また、恋愛関係としては終わったけども、1人目の彼との関係性も素敵だと思いました。
そうだ、後半のスポーツジムにいる主人公を外から捉えたシーンは、エドワード・ホッパーの絵みたいで、構図や色使いやどこか無機質な雰囲気など、ハッとさせられるワンショットで、とても印象的でした。

5
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