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わたしは最悪。のカポERRORのレビュー・感想・評価

わたしは最悪。(2021年製作の映画)
4.0
【『パスト・ライブス/再会』のノラと
『わたしは最悪。』のユリヤ…
      ♂(オトコ)の私が思うこと】

YouTubeで茶一郎氏が推していて、ずっと観たかった本作。
4月に入りU-NEXTでようやく見放題になったので満を持して鑑賞した。
(貧乏人なもんでね。)
感想は…大満足!
何より、本作をこのタイミングで鑑賞出来たことが、私的にとても意味深かった。
それは、奇しくも先日劇場にて鑑賞した『パスト・ライブス/再会』との対比によって、本作の主人公であるユリアへの共感がより深まったからに他ならない。

まずは本作あらすじ。(公式HPより。)
学生時代は成績優秀で、アート系の才能や文才もあるのに、「これしかない!」という決定的な道が見つからず、いまだ人生の脇役のような気分のユリヤ。
そんな彼女にグラフィックノベル作家として成功した年上の恋人アクセルは、妻や母といったポジションをすすめてくる。
ある夜、招待されていないパーティに紛れ込んだユリヤは、若くて魅力的なアイヴィンに出会う。
新たな恋の勢いに乗って、ユリヤは今度こそ自分の人生の主役の座をつかもうとするのだが──。

原題の『Verdens Verste Menneske』は、ノルウェー語で、自分が失敗をやらかした時に使われる言葉だという。
つまり、『わたしは最悪。』の句点”。”は、一人称が発した台詞をイメージ化するためのギミックなのだ。
ノルウェー語のタイトルに倣い、より口語に近付けるならば…『うわ、マジ最悪。』と言ったところか。

主人公のユリヤは、才能豊かで成績優秀ながら、一昔前によく言われたいわゆる”モラトリアム人間”の象徴のように描かれている。
医学→心理学→写真→文筆と、あれこれ転々と道を模索するが、結局30歳になっても書店員を続けていた。
そんな奔放な彼女の恋愛は、表題に挙げた『パスト・ライブス/再会』の主人公ノラとどことなくシンクロする。
いずれも、二人の理解あるパートナーの男性を、振り回し、翻弄し、蹂躙するのだ。(言い過ぎだろうか。)
だがしかし、両ヒロインに対する私の印象と共感度は全く異なる。
ノラの方は、常に自身が世界の中心にいて、仕事も恋愛も(他者の)過去の追憶でさえも、全て自らコントロールしようとしていた。
自分自身の感情や信念が何よりも重要なため、ラストまで相手の気持ちに寄り添う素振りも見せない。
(別れの際には相手の心の痛みなんぞ目もくれず、自分が悲劇のヒロインを演じた。)
しかも、その歩む道のりは、温かい光に照らされ常に明るい。
(少なくとも作中で暗部は描かれていなかった。)
一方、こちらも負けじと奔放な『わたしは最悪。』の主人公ユリヤ。
彼女は、ラストで描かれるカメラマンとしての仕事の成功とは裏腹に、恋愛では手痛い失敗と過酷な悲劇を体験する。
(ネタバレになるので、何が起きたか皆までは言うまい。)
だがその結果、彼女は相手の気持ちに寄り添い、思いやることの出来る大人に成長するのだ。
ラスト、アイヴィンの愛児を遠くから見守るあの優しい眼差し。
その姿が、私にこの上ないエンパシーを与えた。
この点が、両作に対する私の評価(スコア)の明暗を分けたと言える。

自分探しの旅の道すがら、辛い経験を経て、大切なものを学ぶユリヤ。
他者を傷つける自身のこれまでの振る舞いが”最悪”だと思えるようになったのであれば…そんな彼女を応援したくもなるではないか。
ユリヤに幸あれ!

そんな彼女の成長譚『わたしは最悪。』。
未見の方は是非御鑑賞あれ。
現在U-NEXTで見放題配信中。
Amazonプライムビデオではレンタル配信中。

余談)
へ?
私の愛妻がノラとユリヤどっちかだって?
何という愚問。



…ノラだ。
おや、こんな時間に誰か来たようd

『Verdens Verste Menneske』
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