りっく

わたしは最悪。のりっくのレビュー・感想・評価

わたしは最悪。(2021年製作の映画)
3.8
本作は人生の有限性について描いている。自由とも身勝手とも無計画とも見える主人公の、三十路を迎えるまでの岐路の数々。その瞬間では自分の感情の赴くままに動き、現代社会に鬱屈を抱えているからこそ、その規範から脱することを楽しんでいるように見える。そんな人生をナレーションによって冷静に振り返っているような距離感もまたいい。

そんな限りある、特に三十路までの人生における、焦りや煌めき。だが、そもそも人生における幸せとは何なのだろうか。キャリアを築き、ハイスペックな相手と結婚し、子供を授かり幸せな家庭を築くことが人生の価値なのだろうか。そんな疑念を抱きつつも、時間は刻々と進んでいくことで、彼女が女性だからではなく、人間は誰しもが選択を迫られる。時間や世の中の価値観に追いかけられる感覚と、それに抗いつつも内心は焦る心のゆらぎが物語に普遍性を与えている。
りっく

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