昨年のベルリン映画祭コンペ部門に選出されたマリア・シュペト『Mr. Bachmann and His Class』という作品がある。これは、多種多様な背景を持つ生徒が集められたバッハマン先生の教室を1年追ったドキュメンタリーである。この作品の中で、バッハマン先生は生徒たちに対して自分の頭で考えてそれを徹底して言語化させることを促す。そうすることで、持っていた偏見などを表面化させ、間違いに気付かせるのだ。本作品でも似たようなディスカッションが、生徒の間だけではあるが登場する。しかし、200分かけて数回の授業を深掘りした同作に比べると、生徒本人の描き方も議論の描き方も深みに欠けていて、正直劣化コピーといった印象を拭えない。しかも、冒頭と終盤に自分の人生論に沿ったお説教みたいなのが入るので、バッハマン先生の授業は受けたいと思ったが、アナスの授業は特段受けたいとは思わなかった。
・パルムドール:『TITANE / チタン』 ・グランプリ:『インフル病みのペトロフ家』『Everything Went Fine』 ・審査員賞:『パリ13区』 ・監督賞:濱口竜介(『ドライブ・マイ・カー』) ・男優賞:ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ(『ニトラム / NITRAM』) ・女優賞:レナーテ・ラインスヴェ(『The Worst Person in the World』) ・脚本賞:ブリュノ・デュモン(『France』)