Cuma

コンパートメントNo.6のCumaのレビュー・感想・評価

コンパートメントNo.6(2021年製作の映画)
4.0
冬の寝台列車の一人旅。
哀愁と静かな高揚が映画のなかに飽和している。

見知らぬ土地での薄暗い明け方。
街灯の光がぼやけていく様子。
車窓から流れていく景色。

寂しい冬の空気と一人旅の、あの静かな高揚感の温度が入り混じって心地よい。

旅の中で何かを見つけようとしても、結局自分が何も持っていないのだから、そこにはただ旅があるだけだ。

主人公には恋人の周りの知識階級たちとのギャップがあり、彼らに近づこうとして彼らの言葉をそのまま使うがそれは中身を持っていない。

見ておくべき人類のルーツと銘打たれたペトログリフも主人公にとっては結局はただの岩であり、価値のないものだった。

何かを見つけたいもどかしさと、何も見つからない哀愁と、少しの高揚をもたらす出会いたちが描かれた映画を観て、旅に出たくなった。

実は自分も彼女と同じくらいに空っぽなのかもしれない、と映画を観て思った。
Cuma

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