ピロシキ

コンパートメントNo.6のピロシキのレビュー・感想・評価

コンパートメントNo.6(2021年製作の映画)
3.8
「孤独」を扱った作品によく出会うようになった気がするのは、きっとコロナ禍の影響もある。そもそもそういう作品が増えたのか、もしくは自分がより孤独に対して敏感になっただけなのか。このカンヌグランプリ作品もまた、孤独を抱える者たちがそれぞれの人生のうちのほんの一瞬を交差する。エンディングテーマは、天地真理の「ひとりじゃないの」しかあり得ない(監督に誰か教えてあげられればよかったのに)。

電車でたまたま居合わせたフィンランドの女とロシアの男が出会い、同じ時間と空間を共有する。2人で過ごした時間は、2人の心に深く刻まれるだろう。それは(彼が最後まで名前を覚えられなかった)「なんとかグリフ」とは違って、2人以外の誰にも見られることはない。ビデオテープに残る記録よりも、いつまでも心に残る記憶を。

奇しくもロシアが軍事侵攻を今も止めない現状と重ね合わせて観ることとなり、やるせない気持ちにさせられる。「くたばれ」が「愛してる」の裏返しならば、何度も叫んで、笑って済ませられるのに。
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